人当たりのいい笑みを浮かべた神崎は、
「元の時代に戻る方法を探しに来られたのではありませんか?」
人当たりもクソもない唐突な問いを発した。直巳が瞬時に踏み出して、仁愛を背中に隠す。
「お前は誰だ?」
警戒心を露わにした直巳の問いに、神崎は「ただの学芸員です」とネームプレートを掲げた。
「あなたのような方に少し知見がある、学芸員です」
「は?」
「一昨年だったかな、沖光秀という方がいらっしゃいまして。ご自身では『曹長』を名乗っておられたので、『今は少尉ですよ』とお伝えしました」
直巳が「沖が?」と独りごちる。沖飛曹長は、直巳がこの時代に来る直前、彼の護衛に回ろうとした人物だ。
「あなたの展示の日記を見て、小躍りしてお喜びになっておられました。『この時代まで保存されているなら、きっとこの先も大丈夫だろう』と」
直巳が眉間に皺を寄せる。仁愛はその横顔を見ながら考える。
彼は日記の展示を見たとき、『沖の野郎!』『捨てろって言ったのに!』と言っていた。つまり、日記は沖が持っていて、彼がここに届けられるよう手配したということ。
沖は実在する。神崎が言った沖のセリフと直巳の言葉に矛盾はない。しかし、
(『今は少尉』と、『小躍り』)
仮に、沖が終戦まで生き残って、それからも生き続けたとして。自分の最終階級を知らないのはおかしいし、今も生きているとしたら百歳越え——小躍りは難しいだろう。
「それって、戦時中から来た沖さんってことですか?」
仁愛が直巳の肩の横から顔を出して尋ねると、神崎が「ええ、そうですよ」と微笑んだ。
「元の時代への帰り方を探して、ここに来られたそうです。皆さんそうなので、やはりここは当時の軍属の方にとって特別な場所のようですね」
直巳が怪訝そうに片眉を上げる。
「それで、沖はどうしたんだ?」
「帰り方をお教えしたので、もう帰られたと思いますよ」
「は?」
「あなたも沖さんと同じ状況かと思いまして、お教えするべく探していたんです」
神崎が「先日お会いした時は、髪があるので気がつかず」と後ろ頭を掻く。人当たりのいい笑みが、今はひたすら胡散臭い。
「お前、一体何が目的だ?」
「元の時代に戻る方法を探しに来られたのではありませんか?」
人当たりもクソもない唐突な問いを発した。直巳が瞬時に踏み出して、仁愛を背中に隠す。
「お前は誰だ?」
警戒心を露わにした直巳の問いに、神崎は「ただの学芸員です」とネームプレートを掲げた。
「あなたのような方に少し知見がある、学芸員です」
「は?」
「一昨年だったかな、沖光秀という方がいらっしゃいまして。ご自身では『曹長』を名乗っておられたので、『今は少尉ですよ』とお伝えしました」
直巳が「沖が?」と独りごちる。沖飛曹長は、直巳がこの時代に来る直前、彼の護衛に回ろうとした人物だ。
「あなたの展示の日記を見て、小躍りしてお喜びになっておられました。『この時代まで保存されているなら、きっとこの先も大丈夫だろう』と」
直巳が眉間に皺を寄せる。仁愛はその横顔を見ながら考える。
彼は日記の展示を見たとき、『沖の野郎!』『捨てろって言ったのに!』と言っていた。つまり、日記は沖が持っていて、彼がここに届けられるよう手配したということ。
沖は実在する。神崎が言った沖のセリフと直巳の言葉に矛盾はない。しかし、
(『今は少尉』と、『小躍り』)
仮に、沖が終戦まで生き残って、それからも生き続けたとして。自分の最終階級を知らないのはおかしいし、今も生きているとしたら百歳越え——小躍りは難しいだろう。
「それって、戦時中から来た沖さんってことですか?」
仁愛が直巳の肩の横から顔を出して尋ねると、神崎が「ええ、そうですよ」と微笑んだ。
「元の時代への帰り方を探して、ここに来られたそうです。皆さんそうなので、やはりここは当時の軍属の方にとって特別な場所のようですね」
直巳が怪訝そうに片眉を上げる。
「それで、沖はどうしたんだ?」
「帰り方をお教えしたので、もう帰られたと思いますよ」
「は?」
「あなたも沖さんと同じ状況かと思いまして、お教えするべく探していたんです」
神崎が「先日お会いした時は、髪があるので気がつかず」と後ろ頭を掻く。人当たりのいい笑みが、今はひたすら胡散臭い。
「お前、一体何が目的だ?」
