あの橋の下の暗がりに、『今』へ続く君を思う

 仁愛は大きな口で焼き鳥を齧り、喉をゴクゴク鳴らして烏龍茶を飲み、

「ちょっとあたし、この後靖国神社行って調べてみます」

 言うと、泉が「なんで?」と首を傾げた。

「資料より、本人に直接聞いた方が早くないかい? 彼、今日は早出だったから、夕方までには帰って来ると思うよ」
「そうなんですけど……」

 直巳の死の直前。それを本人に尋ねるのは気が引ける。出会った時、彼はそれをなんでもないことのように語ったが、なんでもないはずがない。

 思い出させてしまう、というのが半分。戦争を知らない自分が安易に尋ねていいものではない、と思うのが半分。

 それから、

「自分で見つけたいんです」

 歴史の教科書に載ることのない、いつか忘れ去られてしまうであろう過去。自分は忘れたくない。彼をずっと覚えていたい。だからこの手で集めて、大切にしまっておく。

「とりあえず、直巳の遺品のところに細かい説明が書いてあったはずなので、それを見に行きます」

 一人で行って直巳の遺品を見つけた時も、彼と二人で行った時も、辛くて説明を読むことができなかった。逃げ出したくて仕方がなかった。見なければ、知らずに済む。

 今は愚かだったと思う。どれだけ否定して目を逸らしても、過去を変えることなどできないのだから。彼の未来にいる自分は、決して、過去から目を逸らしてはならない。

     *

 靖国神社の最寄駅を降りたところで、壁のポスターが目に留まった。

(遊就館以外にも、近くに戦争の資料館があるんだ。しょうけい館は……戦争で怪我した人の展示? 昭和館は……戦争中の暮らしについての展示がある)

 靖国神社の遊就館は、強いて言うなら、軍視点の展示のイメージだ。それとは異なる、同じ時代の角度の違う展示が、この近辺に集まっているということ。

(まだ二時だし、どっちか行ってみようかな)

 考えた末、昭和館に行ってみることにした。遊就館とは真逆。銃後の展示。

 駅を出て、スマホの地図アプリを見ながら歩く。建物はすぐに見えてきた。なんとなくアートっぽい、美術館でもおかしくなさそうな外観。

 中に入り、フロアマップを見る。六階と七階が常設展示室になっているらしい。

 チケットを買って展示室へ。最初に置いてあったのは、戦地から送られてきた手紙の展示。あちこちが黒塗りになっていて、当時の検閲についての説明がある。