太平洋戦争での死者数は、戦時中・戦後の混乱や資料の焼失などの理由から、今もなお正確な数字を把握するに至っていない。
ただ、何百万人もの膨大な犠牲があったことは確かだ。
その中から、ここに来たのが直巳だったのはなぜなのか。八十年前の人間が現代に来たなどという話は聞いたことがないが、公になっていないだけで、他にもいるのだろうか。
わからないことだらけだが、一つ確かなのは、全ての死者が時空を渡るわけではないということ。彼がここに来たのには理由がある。
それがわかれば、彼が元の時代に帰る方法が見つかるかもしれない。
夏休みも残り二日。仁愛はヒントを得るために、朝から橋の下を訪れた。直巳は仕事で不在。
「藤野くんがこっちに来た時のことかぁ……」
なぜかブルーシート小屋の前で焼き鳥を焼いていた泉に尋ねると、彼は焼き鳥をひっくり返しながら「うーん」と唸った。
「僕が彼と出会ったのは、彼が来た数時間後でね」
「何か変わったことはありませんでしたか?」
「変わったこと……彼が褌一丁でそこの川に浮いていたことくらいかな」
「川に、浮いて……!?」
「溺れていたわけではないよ。暑いから飛び込んだと言っていた」
「来て早々やることそれ!?」
泉が「彼は破天荒だよねぇ」と微笑む。それからふと、視線を仁愛の背後へ。
「おっ、瀬川くん。買えたかい?」
コンビニの袋を持った瀬川がこちらへ歩いてくる。こくんと頷き、袋を泉の横に置いた。
「ふふっ、やっぱり焼き鳥にはビールだよねぇ」
泉が嬉しそうに袋から取り出したのは、買ったばかりの冷えたビール。——最近少し涼しくなったから、昼間から飲もうという算段だろう。
「梛木さんは烏龍茶で大丈夫?」
泉はビールの缶を瀬川に渡し、袋から烏龍茶のペットボトルを取って仁愛に差し出した。仁愛が「ありがとうございます」と受け取ると、その流れで紙皿を取って焼き鳥を乗せていく。
「はい、どうぞ」
一つを仁愛に。もう一つを瀬川に。新しい串を網に置きながらビールの缶を開けて一口。
(ファッションホームレス……なんか、楽しそう)
仁愛が内心で独りごちたところで、泉が「瀬川くんは何か知っているかい?」と尋ねた。瀬川が焼き鳥を齧りながら首を傾げる。
ただ、何百万人もの膨大な犠牲があったことは確かだ。
その中から、ここに来たのが直巳だったのはなぜなのか。八十年前の人間が現代に来たなどという話は聞いたことがないが、公になっていないだけで、他にもいるのだろうか。
わからないことだらけだが、一つ確かなのは、全ての死者が時空を渡るわけではないということ。彼がここに来たのには理由がある。
それがわかれば、彼が元の時代に帰る方法が見つかるかもしれない。
夏休みも残り二日。仁愛はヒントを得るために、朝から橋の下を訪れた。直巳は仕事で不在。
「藤野くんがこっちに来た時のことかぁ……」
なぜかブルーシート小屋の前で焼き鳥を焼いていた泉に尋ねると、彼は焼き鳥をひっくり返しながら「うーん」と唸った。
「僕が彼と出会ったのは、彼が来た数時間後でね」
「何か変わったことはありませんでしたか?」
「変わったこと……彼が褌一丁でそこの川に浮いていたことくらいかな」
「川に、浮いて……!?」
「溺れていたわけではないよ。暑いから飛び込んだと言っていた」
「来て早々やることそれ!?」
泉が「彼は破天荒だよねぇ」と微笑む。それからふと、視線を仁愛の背後へ。
「おっ、瀬川くん。買えたかい?」
コンビニの袋を持った瀬川がこちらへ歩いてくる。こくんと頷き、袋を泉の横に置いた。
「ふふっ、やっぱり焼き鳥にはビールだよねぇ」
泉が嬉しそうに袋から取り出したのは、買ったばかりの冷えたビール。——最近少し涼しくなったから、昼間から飲もうという算段だろう。
「梛木さんは烏龍茶で大丈夫?」
泉はビールの缶を瀬川に渡し、袋から烏龍茶のペットボトルを取って仁愛に差し出した。仁愛が「ありがとうございます」と受け取ると、その流れで紙皿を取って焼き鳥を乗せていく。
「はい、どうぞ」
一つを仁愛に。もう一つを瀬川に。新しい串を網に置きながらビールの缶を開けて一口。
(ファッションホームレス……なんか、楽しそう)
仁愛が内心で独りごちたところで、泉が「瀬川くんは何か知っているかい?」と尋ねた。瀬川が焼き鳥を齧りながら首を傾げる。
