「君は、素直じゃない、ね」
「あ?」
「好きな子に好きって、言わないのが、『大和魂』?」
「だから、俺は別に仁愛が好きなわけじゃないって言ってんだろ」
「僕は、梛木さんのことだなんて、言ってない」
「てめぇ……」
「やっぱり君は、梛木さんが、好き?」
瀬川がコテっと首を傾げてニヤリと笑う。——この言動は絶対、泉の影響を受けたものだ。
(こいつら、寄ってたかって『梛木さん、梛木さん』って。俺はそんなにわかりやすい……あっ、いや、違う……えっ、あれ?)
ぐるぐる思考を巡らせていた直巳は、「うがーっ!」と叫んで立ち上がった。
「瀬川お前! そんなクソ話できるなら、もう会話の練習なんかいらないな!」
「ううん。まだ、女性は、怖い」
「だったら女がいないとこで生きてけばいい!」
「今時、女性がいない環境は、少ない。男女平等。男女雇用機会、均等、法」
「そうかよ! じゃあまあ頑張れ! 俺はもう知らん!」
「じゃあ、梛木さんが来たとき、練習、お願いする」
「んなぁーにーぃ!?」
瀬川が悪巧み顔で「その方が、いい」と続ける。
「藤野くん、今まで、ありがとう」
「ちょっと待てぇ! 勝手に終わらすな!」
「僕は、次のステップに、進む」
「何、俺から卒業しようとしてんだ!」
「ダメ?」
「卒業はいい。だが仁愛はダメだ」
「でも、今も時々、練習付き合って、もらってる」
「なんだそれ初耳だぞ!」
「君がいない時、だから」
「なあっ!?」
「大丈夫。いつも、泉さんも、一緒」
瀬川が「ふふっ」と笑い、「ヤキモチ?」と尋ねてくる。直巳は「クソがぁ!」と叫んでそっぽを向くが、
(楽しいな。……本当に、心の底から。死ぬ前にここに来れてよかった)
内心は凪いだ海のよう。思考の先は海の底に繋がっている。
(いつか、帰って来たい)
死ぬはずの空から、八十年後の世界へ。そんな突拍子もないことが起こり得るのなら、幽霊がいたっていいだろう。
幽霊になって孤独の時間を歩き続けるでも、地獄の業火に焼かれるでも、なんでもいい。死後も『藤野直巳』が消滅せず、いつかこの時代に至れるなら。
そもそも、現状、元の時代に帰る手段も見つかっていないわけだが。直巳はずっと、その後のことを考えている。
「あ?」
「好きな子に好きって、言わないのが、『大和魂』?」
「だから、俺は別に仁愛が好きなわけじゃないって言ってんだろ」
「僕は、梛木さんのことだなんて、言ってない」
「てめぇ……」
「やっぱり君は、梛木さんが、好き?」
瀬川がコテっと首を傾げてニヤリと笑う。——この言動は絶対、泉の影響を受けたものだ。
(こいつら、寄ってたかって『梛木さん、梛木さん』って。俺はそんなにわかりやすい……あっ、いや、違う……えっ、あれ?)
ぐるぐる思考を巡らせていた直巳は、「うがーっ!」と叫んで立ち上がった。
「瀬川お前! そんなクソ話できるなら、もう会話の練習なんかいらないな!」
「ううん。まだ、女性は、怖い」
「だったら女がいないとこで生きてけばいい!」
「今時、女性がいない環境は、少ない。男女平等。男女雇用機会、均等、法」
「そうかよ! じゃあまあ頑張れ! 俺はもう知らん!」
「じゃあ、梛木さんが来たとき、練習、お願いする」
「んなぁーにーぃ!?」
瀬川が悪巧み顔で「その方が、いい」と続ける。
「藤野くん、今まで、ありがとう」
「ちょっと待てぇ! 勝手に終わらすな!」
「僕は、次のステップに、進む」
「何、俺から卒業しようとしてんだ!」
「ダメ?」
「卒業はいい。だが仁愛はダメだ」
「でも、今も時々、練習付き合って、もらってる」
「なんだそれ初耳だぞ!」
「君がいない時、だから」
「なあっ!?」
「大丈夫。いつも、泉さんも、一緒」
瀬川が「ふふっ」と笑い、「ヤキモチ?」と尋ねてくる。直巳は「クソがぁ!」と叫んでそっぽを向くが、
(楽しいな。……本当に、心の底から。死ぬ前にここに来れてよかった)
内心は凪いだ海のよう。思考の先は海の底に繋がっている。
(いつか、帰って来たい)
死ぬはずの空から、八十年後の世界へ。そんな突拍子もないことが起こり得るのなら、幽霊がいたっていいだろう。
幽霊になって孤独の時間を歩き続けるでも、地獄の業火に焼かれるでも、なんでもいい。死後も『藤野直巳』が消滅せず、いつかこの時代に至れるなら。
そもそも、現状、元の時代に帰る手段も見つかっていないわけだが。直巳はずっと、その後のことを考えている。
