あの橋の下の暗がりに、『今』へ続く君を思う

「なんでだよ。これなら上手く写るかもしれないだろ」
「それ願掛けなの?」
「いいからほら、早く撮れ」

 仁愛は女子高生風のポーズを取る直巳に少し笑いそうになりながらカメラを構えて、シャッターを押した。

 ジリジリと音を立てながら写真が出てきて、それを見た直巳が「よっしゃー!」とガッツポーズをする。

「ほれ見ろ、泉。お前が下手くそなだけだったんだ」

 勝ち誇った顔で直巳が指す写真には、やはり女子高生風ポーズの彼の姿。——目は、きちんと開いている。

(勝利判定、目なの?)

 それからいつも通り談笑をしたり、泉が写真を撮ったりして過ごした。ふと、泉が写っていないことに気づいた仁愛が言うと、

「これ、タイマーも遠隔シャッターも付いてないんだよ」
「じゃあ、自撮りみたいにしたらどうですかね」
「自撮り?」
「こう、みんなで集まって……」

 四人でぎっちり身を寄せて、一番腕が長い瀬川が、掲げたカメラのシャッターを押す。意外や意外。上手く撮れた。

「一番写真が上手なの、瀬川さんかもしれませんね」

 仁愛が言うと、瀬川は照れ臭そうに後ろ頭を掻いた。

 そうして和気藹々と過ごした、夕方の帰り道。仁愛は歩きながら、六枚の写真をトランプの手札よろしく広げた。

 目が半開きになった直巳の写真が五枚と、笑顔でダブルピースをしているものが一枚。泉がこれを渡してきた時の姿が脳裏を過ぎる。

『これ、藤野くんシリーズ。あげるよ』

 ——見るからに笑いを堪えていた。

(『藤野くんシリーズ』とは……)

 内心で独りごちて『藤野くんシリーズ』をカバンにしまい、四人で撮った写真を取り出す。

「楽しかったなぁ」

 口の横で片手ピースをする仁愛と、その隣で横目に仁愛を見ている直巳。仁愛の後ろで小さくピースをする瀬川、顔の横に両手を広げた泉。

 年齢もバックグラウンドも、何もかもが違う四人。——普通なら出会わなかった四人。

(今度、写真立て買いに行こう)

 この日の幸福を、仁愛は一生忘れない。