「へえ」
「お前、本当にお嬢様だったんだな。こんな図書館みたいな本棚あって、エアコンまでついてる部屋使ってるなんて」
直巳が「すげえなぁ」と呟きながらエアコンの風の下に行き、「涼しいー」とご機嫌な声で言う。それからふと振り返り、
「なんだお前、ガサツに見えて裁縫できんのか」
仁愛の机の上を見て、意外そうに片眉を上げた。——作りかけのお守りが置いたままになっている。
「何作って——」
直巳が机へ向かって踏み出した。仁愛は「うわーっ!」と叫んで立ちはだかる。驚いた様子で立ち止まった直巳は、すぐにニヤリと悪巧み顔になり、
「なんだぁ? 恥ずかしいもんでも作ってんのか?」
——完全に、靖国神社での応酬の再演。
「作ってない! 何もない!」
「どう見てもあるだろ。隠すなって」
直巳が右へ左へと移動して、机の上を覗こうとする。仁愛もまた横にステップを踏んでそれを遮る。
「見せてみろって。笑わないから」
「あんた、靖国での恩を仇で返す気? あたしは見ないであげたのに!」
「少しくらいいいだろ。仁愛様は何作ってんだ?」
「このっ……明日一人で靖国行って、あんたの日記ゆっくりじっくり読もうかな!」
「なっ……!?」
直巳がギョッとした顔で動きを止めた。仁愛はその隙に、机の鍵がかかる引き出しを開け、お守りを入れて鍵をかけた。
少しの沈黙。
「あたし、夜ご飯作ってくるから、あんたはここで本でも読んでて!」
仁愛が大股でドアへ向かうと、直巳の「お、おう」と少し呆けたような返事が背中にかかった。
それから仁愛は一階のキッチンへ行き、冷蔵庫を開けた。思えば、一人の食事は適当にパンを齧ったり袋菓子をつまんだりするのが日常で、料理をするのは久々。
中学生の頃——正確には、『いい子ちゃん』をやめる二年生の頃までは、よく料理をしていた。凝った料理を作ると父が褒めてくれたからだ。
『仁愛』を褒めているのではなく『早熟な娘』を喜んでいるだけだと知ってからやめた。
「お前、本当にお嬢様だったんだな。こんな図書館みたいな本棚あって、エアコンまでついてる部屋使ってるなんて」
直巳が「すげえなぁ」と呟きながらエアコンの風の下に行き、「涼しいー」とご機嫌な声で言う。それからふと振り返り、
「なんだお前、ガサツに見えて裁縫できんのか」
仁愛の机の上を見て、意外そうに片眉を上げた。——作りかけのお守りが置いたままになっている。
「何作って——」
直巳が机へ向かって踏み出した。仁愛は「うわーっ!」と叫んで立ちはだかる。驚いた様子で立ち止まった直巳は、すぐにニヤリと悪巧み顔になり、
「なんだぁ? 恥ずかしいもんでも作ってんのか?」
——完全に、靖国神社での応酬の再演。
「作ってない! 何もない!」
「どう見てもあるだろ。隠すなって」
直巳が右へ左へと移動して、机の上を覗こうとする。仁愛もまた横にステップを踏んでそれを遮る。
「見せてみろって。笑わないから」
「あんた、靖国での恩を仇で返す気? あたしは見ないであげたのに!」
「少しくらいいいだろ。仁愛様は何作ってんだ?」
「このっ……明日一人で靖国行って、あんたの日記ゆっくりじっくり読もうかな!」
「なっ……!?」
直巳がギョッとした顔で動きを止めた。仁愛はその隙に、机の鍵がかかる引き出しを開け、お守りを入れて鍵をかけた。
少しの沈黙。
「あたし、夜ご飯作ってくるから、あんたはここで本でも読んでて!」
仁愛が大股でドアへ向かうと、直巳の「お、おう」と少し呆けたような返事が背中にかかった。
それから仁愛は一階のキッチンへ行き、冷蔵庫を開けた。思えば、一人の食事は適当にパンを齧ったり袋菓子をつまんだりするのが日常で、料理をするのは久々。
中学生の頃——正確には、『いい子ちゃん』をやめる二年生の頃までは、よく料理をしていた。凝った料理を作ると父が褒めてくれたからだ。
『仁愛』を褒めているのではなく『早熟な娘』を喜んでいるだけだと知ってからやめた。
