家へ向かう道中。直巳はさっきからボケっとした顔で黙り込んでいる。正面を向いて固まったままポテポテと歩く様は、心ここに在らずといった様子。
彼を横目に、仁愛は考える。
(やっぱ、急に家誘うとか変だったかな)
彼に何かをしてやりたい思いがずっとある。靖国神社に行ったときもそう。お守りを作っている間もそう。今も、『部屋の本棚を見たら喜ぶかな』などと考えている。
恋愛感情とは少し違う。彼を憐れんで施しをしようということでもない。
ただ、幸せであって欲しいと思う。彼が帰ったら死んでしまうと知ってから、その気持ちが強くなった。
彼が死地へ帰ることについては、まだ完全に納得できたわけではない。しかし、お守りを作る中で、少しだけ気持ちの整理がついた気がする。
(せめてこっちにいる間は楽しく過ごして欲しい、って感じ)
そうして黙ったまま住宅地を歩くことしばらく。見慣れた景色に見慣れた家——ありふれた建売住宅の我が家が見えてきて、門を開けて入り、
「やっぱ普通に考えてダメだろーっ!」
突如、直巳が叫んだ。仁愛は内心で独りごちる。
(なんか、一緒に遺品見に行ったときも思ったけど、これのせいでしんみりできない……まあ、直巳らしいと言えばらしいか)
それから「何、急に」と顔を顰めて振り返った。直巳が「『何』じゃない!」と両手を体の前で動かす。——あれだ。セミナーの広告などで見かける『ろくろポーズ』。
「俺は男だ!」
「知ってるよ」
「お前はガキだが女だろ!」
「『ガキ』が余計」
「それをお前っ、家呼ぶとかっ……お、親御さんになんて説明すんだよ!」
「親いたら呼ばないよ。今日明日いないから呼んだの」
仁愛はため息をついて玄関へ。カバンから鍵を出したところで、背後から「もっとダメだろーっ!」と直巳の叫び。
「もうっ、あんたさっきからうっさい! 近所迷惑だから静かにして!」
「お前が不用心過ぎるからだろ! そんなんでよく今まで生きて来れたな!」
「何それ、喧嘩売ってんの?」
「誰もいない家にひょいひょい男上げんな!」
「上げてないよ! あんたが初めて!」
彼を横目に、仁愛は考える。
(やっぱ、急に家誘うとか変だったかな)
彼に何かをしてやりたい思いがずっとある。靖国神社に行ったときもそう。お守りを作っている間もそう。今も、『部屋の本棚を見たら喜ぶかな』などと考えている。
恋愛感情とは少し違う。彼を憐れんで施しをしようということでもない。
ただ、幸せであって欲しいと思う。彼が帰ったら死んでしまうと知ってから、その気持ちが強くなった。
彼が死地へ帰ることについては、まだ完全に納得できたわけではない。しかし、お守りを作る中で、少しだけ気持ちの整理がついた気がする。
(せめてこっちにいる間は楽しく過ごして欲しい、って感じ)
そうして黙ったまま住宅地を歩くことしばらく。見慣れた景色に見慣れた家——ありふれた建売住宅の我が家が見えてきて、門を開けて入り、
「やっぱ普通に考えてダメだろーっ!」
突如、直巳が叫んだ。仁愛は内心で独りごちる。
(なんか、一緒に遺品見に行ったときも思ったけど、これのせいでしんみりできない……まあ、直巳らしいと言えばらしいか)
それから「何、急に」と顔を顰めて振り返った。直巳が「『何』じゃない!」と両手を体の前で動かす。——あれだ。セミナーの広告などで見かける『ろくろポーズ』。
「俺は男だ!」
「知ってるよ」
「お前はガキだが女だろ!」
「『ガキ』が余計」
「それをお前っ、家呼ぶとかっ……お、親御さんになんて説明すんだよ!」
「親いたら呼ばないよ。今日明日いないから呼んだの」
仁愛はため息をついて玄関へ。カバンから鍵を出したところで、背後から「もっとダメだろーっ!」と直巳の叫び。
「もうっ、あんたさっきからうっさい! 近所迷惑だから静かにして!」
「お前が不用心過ぎるからだろ! そんなんでよく今まで生きて来れたな!」
「何それ、喧嘩売ってんの?」
「誰もいない家にひょいひょい男上げんな!」
「上げてないよ! あんたが初めて!」
