あの橋の下の暗がりに、『今』へ続く君を思う

(神様があたしの味方なら、祈る価値はあるよね)

 その後、仁愛はショッピングモール内の手芸店へ向かった。スマホでお守りの作り方を調べながら材料を買って帰宅。

 夜中まで作業を続けたが完成させられず、その日は作りかけのお守りを机の上に置いたまま寝た。——昔から、仁愛の家庭科の成績は、手芸の実習がある学期だけ悪い。

     *

 翌日。仁愛が昼過ぎに橋の下を訪れると、直巳は相変わらず段ボールの上に寝そべっていた。「何してんの?」と尋ねると、やはり「川見てる」と答える。

「お前——」

 直巳はのそっと起き上がり、

「……手ぇどうした?」

 仁愛の左手を指した。厳密には、左手の人差し指の横の部分。昨日、お守りを縫うときに何度も針を刺してしまい、鬱血のようになっている。

「ちょっと……転んだ」

 仁愛は適当にはぐらかして直巳の隣に座った。彼は少しの沈黙を置いて、

「どんな転び方したんだよ」

 呆れたように言って、それ以上は尋ねなかった。

 それからぼんやり川を眺めたり、適当な話をしたり、少し昼寝をしたりして、

「そういや、この時代の女学生ってのは、夏休みの間も塾とかで忙しいんじゃないのか?」

 不意に直巳が尋ねた。

「『必勝』の鉢巻して、ガリガリ勉強するんだろ?」
「何それ、どこ情報?」
「泉が言ってた」
「……あんたそれ、騙されてるよ」
「違うのか?」
「やってる人が絶対いないとは言い切れないけど……あたしは普通に塾行くだけ。鉢巻も『ガリガリ』もしない」
「でも塾はあるんだろ? 行かないのか?」
「行ってるよ。……二回に一回くらい」

 直巳は「二回に一回ぃ?」と怪訝そうな顔をする。

「全部行けよ。せっかく行けるのに、もったいないだろ」
「それは、そうだけどさぁ……」