夏休みも残すところ一週間。昼にバイトを終えた仁愛は、その足で駅前のショッピングモールを訪れた。フードコートでハンバーガーを食べて昼食を済ませる。
今日から三日間、両親は親戚の集まりで留守。仁愛も一緒に行くように言われたが、塾を優先したいと言って断った。両親は「そうか」とだけ言って、今朝方、親戚の家へ向かった。帰りは明後日の深夜の予定。
普段は両親が家にいる時間を考えて、鉢合わせしないよう行動している。そこから解き放たれた三日間。何の予定があるわけでもないが心は軽く、楽しみだ。
(とりあえず、これ食べたら直巳のところに行こっかな)
考えながらハンバーガーの最後の一口を頬張る。何の気なしに周囲へ視線を向けると、自分と同じ年頃の女子が集まる席が目に留まった。
食べ終えたトレーを横に押しやり、何かを作っている。多分、お守り。野球部とかサッカー部とか、夏に大会があるタイプの意中の相手に渡すものだろう。
(お守りかぁ……)
内心で独りごちたところに、直巳の顔が浮かぶ。慌てて頭を振ってそれを掻き消し、ナゲットを口に放り込む。
しかし、やはり、また浮かんで——
(いつか直巳が帰る時、どうせなら元の操縦席じゃなくて、もっと前の……)
例えば、彼が海軍学校に入る前に戻れたなら。そこから普通の大学に通う道に進めば、彼は空で死なずに済む。
(でも、直巳ならまた海軍学校に入る)
それでまた訓練から始めて、今度は着陸を失敗した零戦と一緒に焼け死ぬ、などということになったら本末転倒。
過去のどの時点に戻ろうとも、彼は戦闘機パイロットへの道を進むだろう。何度やり直したところで、彼が彼であることは変わらないから。
ゆえにどこへ戻ろうと同じこと。——と、結論しかけたところで、
(そうだ、空襲の日)
直巳の家族は空襲で死んだ。それがいつ、どこの空襲か知らないが、それより前に戻ることができたら、
(家族に逃げるように伝えられる。……直巳の悲しみを減らせる)
直巳をこの時代に連れて来たのが神だとして、その動機も意図もわからない。ただ、状況から言えるのは、彼が死ぬのを遅らせたということ。
それから、梛木仁愛に彼を会わせてくれたということ。
今日から三日間、両親は親戚の集まりで留守。仁愛も一緒に行くように言われたが、塾を優先したいと言って断った。両親は「そうか」とだけ言って、今朝方、親戚の家へ向かった。帰りは明後日の深夜の予定。
普段は両親が家にいる時間を考えて、鉢合わせしないよう行動している。そこから解き放たれた三日間。何の予定があるわけでもないが心は軽く、楽しみだ。
(とりあえず、これ食べたら直巳のところに行こっかな)
考えながらハンバーガーの最後の一口を頬張る。何の気なしに周囲へ視線を向けると、自分と同じ年頃の女子が集まる席が目に留まった。
食べ終えたトレーを横に押しやり、何かを作っている。多分、お守り。野球部とかサッカー部とか、夏に大会があるタイプの意中の相手に渡すものだろう。
(お守りかぁ……)
内心で独りごちたところに、直巳の顔が浮かぶ。慌てて頭を振ってそれを掻き消し、ナゲットを口に放り込む。
しかし、やはり、また浮かんで——
(いつか直巳が帰る時、どうせなら元の操縦席じゃなくて、もっと前の……)
例えば、彼が海軍学校に入る前に戻れたなら。そこから普通の大学に通う道に進めば、彼は空で死なずに済む。
(でも、直巳ならまた海軍学校に入る)
それでまた訓練から始めて、今度は着陸を失敗した零戦と一緒に焼け死ぬ、などということになったら本末転倒。
過去のどの時点に戻ろうとも、彼は戦闘機パイロットへの道を進むだろう。何度やり直したところで、彼が彼であることは変わらないから。
ゆえにどこへ戻ろうと同じこと。——と、結論しかけたところで、
(そうだ、空襲の日)
直巳の家族は空襲で死んだ。それがいつ、どこの空襲か知らないが、それより前に戻ることができたら、
(家族に逃げるように伝えられる。……直巳の悲しみを減らせる)
直巳をこの時代に連れて来たのが神だとして、その動機も意図もわからない。ただ、状況から言えるのは、彼が死ぬのを遅らせたということ。
それから、梛木仁愛に彼を会わせてくれたということ。
