あの橋の下の暗がりに、『今』へ続く君を思う

 仁愛は勢いよく起き上がった。

「戦争で死んだ人が祀られてる神社。そこの資料館なら、直巳の情報が掴めるかも」

 地図アプリを開いて、靖国神社までの経路を検索。電車とバスを乗り継いで片道二時間。交通費は往復で二千円と少し。この前入ったバイト代で十分行ける距離だ。

     *

 神社最寄りの地下鉄駅から地上に出ると、ギラギラした夏の陽光が全身に照り付けた。昨日の雨はとっくに乾き、湿度の高い熱気が空間に満ちている。

 仁愛は地図アプリを見ながらコンクリートの坂を登り始めた。この暑さの中で道に迷ったらと心配していたが、まっすぐ歩くとすぐに、巨大な鳥居が見えてきた。

(デカっ! ええっと、あれが第一鳥居で……)

 横断歩道を渡って鳥居の方へ。周囲の参拝客に倣い、一礼してから中に入る。

(このお辞儀って、神様に対してなのかな?)

 そんなことを考えながら広い石畳の参道を進み、真ん中に銅像がある丸い広場に出た。スマホに表示した遊就館の案内図には、広場の真ん中に『大村益次郎像』と書かれている。

(大村益次郎って聞いたことある。……幕末辺りの人だっけ?)

 銅像を横目にまっすぐ進み、第二鳥居と門をくぐる。正面に拝殿。辺りを見回すと、右手に『遊就館』の文字を見つけた。進むと、入り口周りがガラス張りの綺麗な建物が見えてきた。

 自動ドアを入り、冷房の効いた空気に一息。右手の券売機でチケットを買って振り返ったところで、戦闘機の展示に気がついた。

 濃い緑の機体。操縦席の少し後ろのところに赤い丸が描かれている。

(零戦……)

 太平洋戦争を題材とした映画でよく見る機体だ。仁愛はそれを横目に入場ゲートを通って二階へ。

(紫電改はないのかな)

 ひとまず、足元に書かれた閲覧コース通りに見て回ることにした。

 薄暗い展示室に入って、ざっくりとした歴史説明の先に見えてきたのは、西南戦争の展示。

(靖国神社の名前は太平洋戦争関係でよく聞くけど、それだけじゃないんだ。西南戦争って……ペリーとかの時代のやつだよね?)

 次に日清戦争、日露戦争。この辺りは仁愛にとって、受験のための暗記ものの世界。刀や軍服、勢力図の展示の中に、高校受験で書いた単語を見かける。

 それから満州事変、日中戦争を経て一階に戻り、太平洋戦争の展示へ。

(この辺りもやっぱり、知識としては『歴史の一ページ』って感じだけど……)