あの橋の下の暗がりに、『今』へ続く君を思う

 今日はあいにくの雨。両親は揃って仕事が休みで、仁愛は朝から自室に閉じこもっている。

 ベッドに横たわり、スマホの天気予報アプリを開く。この雨は台風によるもので、今日の夕方まで続くらしい。

 コツンと、窓ガラスに何かがぶつかる音。見ると、暴風雨に混ざって落ち葉やゴミ袋が舞っている。仁愛はスマホの検索ブラウザを開いた。

 検索ボックスに『ホームレス 雨の日 どうしてる』と入力。横の虫眼鏡をタップしようとして手を止めた。

(まあ、泉さんが川に流されるなんてヘマするわけないし、直巳は流されても泳いでどうにかできそうだし、瀬川さんはちょっと心配だけど……まあ、二人がいるから大丈夫でしょ)

 そんなことを考えながら検索ボックスの文字を消し、『藤野直巳 紫電改』と打ち込んで検索。紫電改に関するページが出てくるが、どのページにも直巳の名前はない。

 それから仁愛はワードを変えて検索を続けた。『昭和二十年八月二日 B−24爆撃機』『空襲 八月二日』『藤野直巳 沖飛曹長』——どれも目ぼしい情報はなし。

(やっぱネットじゃ無理か)

 仁愛はため息を一つ。スマホをベッドに放り出し、机の上の本を取る。図書館で借りてきた太平洋戦争関連の書籍だ。目次を開いて、それらしい情報がありそうなページを探す。

 そうして一冊、二冊と確認していき、最後の一冊。結局『藤野直巳』の名前は見つけられなかった。

(あとは……なんだろ。戦争関連の資料館とか?)

 考えながらスマホを取り、何の気なしにSNSのアプリを開いた。おすすめ欄を適当にスワイプしていくと、『終戦』や『黙祷』の文字が目につく。

(そっか。今日は八月十五日……終戦の日だ)

 戦争関連のテレビ特番や映画の話。特攻のこと、零戦のこと、戦艦大和のこと——様々な情報が流れる中、政治家が靖国神社を参拝したというニュースが目に留まった。

(靖国神社……夏によく聞く名前だけど、結局どういうとこなのか知らないなぁ。政治家が行くと怒る人がいるから、政治と距離取らないといけないとことか?)

 ふと不思議に思い、検索してみる。一番上に表示された靖国神社のウェブページをタップ。

(国家のために捧げられた、御霊(みたま)……戦争で死んだ人が祀られてる? そっか。だから戦争映画でよく『靖国で会おう』って言ってるんだ)

 片っ端からページに目を通していくと、『遊就館のご案内』のページに辿り着いた。

 これはどうやら資料館のようなものらしい。靖国神社ができたのが明治二年。それから太平洋戦争までの、戦争に関する様々な資料が展示されているとか。

「これだ!」