直巳もまた暑さに疲れた様子で橋脚にもたれていて、「こっちに来た時も思ったが」と言いながら目を閉じた。
「おかしいぞこの暑さ。夏のダバオだってこんなじゃなかった」
「ダバオ?」
「フィリピンだ」
「えっ、日本の夏、フィリピンより暑いの!?」
「今の日本と八十年前のフィリピンを比べたら、な。今のフィリピンは知らん」
仁愛が「温暖化とかかなぁ」と独りごちると、直巳が片目を開けてこちらを見た。
「お前の教科書にちょろっと書いてあったな、それ。なんつったか、温室……」
「温室効果ガス。産業革命以降の化石燃料の消費で増えた二酸化炭素とかが、地球の熱が宇宙に放出されるのを妨げてる」
「なんだお前、急に先生みたいだな。秀才お嬢様仁愛か」
「だからお嬢様って言うのやめてってば」
仁愛は半ば諦めモードで苦言を呈し、カバンからペットボトルのお茶を取り出した。最後の一口を飲み干して、空のペットボトルをカバンに放る。
それを見ていた直巳が、「しゃあない」と言って立ち上がった。泉たちのブルーシート小屋がある方向へ歩き出す。
「どうしたの?」
「ちょっと待ってろ」
仁愛はカバンを持ってついて行く。直巳はなぜか、泉の小屋のドアを黙って開ける。
「えっ、声かけなし?」
「留守だからな。泉はいつも、この時間帯は『暑い』っつってどっか行ってる」
「『どっか』って、どこに?」
「さあな。その辺の店か、家に帰ってるのかも。あいつは自称、あー……ファッションホームレス?とかなんとか」
直巳が小屋に入り、中からガサゴソと物音。不思議に思った仁愛が覗くと、ちょうど直巳が飛行服のズボンを脱ぐところだった。
「ちょっ、何やってんの!」
「あ? なんだよ。待ってろっつったろ」
「急に脱ぐとかあり得ないんだけど!」
仁愛は叫びながら踵を返した。背後に「だから待ってろって……」と直巳の呆れ声を聞きながら川まで走って足を止める。少しの距離なのに、全身から一気に汗が吹き出した。
(何やってんのあたし……てか、めっちゃ暑っ……)
「おかしいぞこの暑さ。夏のダバオだってこんなじゃなかった」
「ダバオ?」
「フィリピンだ」
「えっ、日本の夏、フィリピンより暑いの!?」
「今の日本と八十年前のフィリピンを比べたら、な。今のフィリピンは知らん」
仁愛が「温暖化とかかなぁ」と独りごちると、直巳が片目を開けてこちらを見た。
「お前の教科書にちょろっと書いてあったな、それ。なんつったか、温室……」
「温室効果ガス。産業革命以降の化石燃料の消費で増えた二酸化炭素とかが、地球の熱が宇宙に放出されるのを妨げてる」
「なんだお前、急に先生みたいだな。秀才お嬢様仁愛か」
「だからお嬢様って言うのやめてってば」
仁愛は半ば諦めモードで苦言を呈し、カバンからペットボトルのお茶を取り出した。最後の一口を飲み干して、空のペットボトルをカバンに放る。
それを見ていた直巳が、「しゃあない」と言って立ち上がった。泉たちのブルーシート小屋がある方向へ歩き出す。
「どうしたの?」
「ちょっと待ってろ」
仁愛はカバンを持ってついて行く。直巳はなぜか、泉の小屋のドアを黙って開ける。
「えっ、声かけなし?」
「留守だからな。泉はいつも、この時間帯は『暑い』っつってどっか行ってる」
「『どっか』って、どこに?」
「さあな。その辺の店か、家に帰ってるのかも。あいつは自称、あー……ファッションホームレス?とかなんとか」
直巳が小屋に入り、中からガサゴソと物音。不思議に思った仁愛が覗くと、ちょうど直巳が飛行服のズボンを脱ぐところだった。
「ちょっ、何やってんの!」
「あ? なんだよ。待ってろっつったろ」
「急に脱ぐとかあり得ないんだけど!」
仁愛は叫びながら踵を返した。背後に「だから待ってろって……」と直巳の呆れ声を聞きながら川まで走って足を止める。少しの距離なのに、全身から一気に汗が吹き出した。
(何やってんのあたし……てか、めっちゃ暑っ……)
