直巳が立ち上がり、伸びをする。仁愛が「どう考えても食べきれないよね」と呟くと、彼は腕を回しながら、
「じゃあ、あいつも呼ぶか」
そう言って、ブルーシート小屋のある方へ歩き出した。
*
泉が小屋からキャンプ用の折り畳みテーブルと椅子四脚を持ってきて、直巳と一緒に橋の下の日陰に並べる。テーブルも椅子も真新しく、端に有名なアウトドアメーカーのロゴが付いている。
(普通だったら、誰かが捨てたのを持ってきたのかなって思うけど……泉さんの経歴考えると、多分普通に買ったんだろうな)
仁愛は泉の底知れなさを感じつつ、テーブルに弁当の袋を置いた。さっきから少し離れたところに立つ人影が気になるが、尋ねるタイミングを見出せずにいる。
泉が椅子に座って弁当を取り出し、「おっ、ビリヤニだ」と微笑んだ。
「インド出張を思い出すよ」
「泉さん、海外よく行ってたんですか?」
「うん。出世してからはあんまりだったけど、若い頃はあちこち飛び回っていてね。インドは特に思い出深い」
「どうしてですか?」
「着いて早々、お腹がペコペコでね。商談の時間が迫っていたから、手短に食事を済ませようと思って適当な屋台のカレーを食べたら、腹痛で商談中に脂汗がダラダラ」
「えー……それで、どうしたんですか?」
「気合いで耐えたよ。その後は夜になってもトイレから出られなかった」
「うわー……」
泉が「今となっては楽しい思い出さ」と微笑む。
「た、楽しい?」
「そうさ。その時は辛くて大変でも、遠い過去として振り返ってみると懐かしく思うこともある。あの頃に戻りたいとさえ、ね」
「……また、お腹を壊したい?」
「それは嫌だけど、なんだろうなぁ……今だったら絶対にあの屋台で食事をしようと思わないから、当時の若さとか無鉄砲さとか、冒険していた頃の自分は、それはそれでよかったな、みたいな感じだよ」
憧憬に似た泉の表情に、仁愛は思う。
「じゃあ、あいつも呼ぶか」
そう言って、ブルーシート小屋のある方へ歩き出した。
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泉が小屋からキャンプ用の折り畳みテーブルと椅子四脚を持ってきて、直巳と一緒に橋の下の日陰に並べる。テーブルも椅子も真新しく、端に有名なアウトドアメーカーのロゴが付いている。
(普通だったら、誰かが捨てたのを持ってきたのかなって思うけど……泉さんの経歴考えると、多分普通に買ったんだろうな)
仁愛は泉の底知れなさを感じつつ、テーブルに弁当の袋を置いた。さっきから少し離れたところに立つ人影が気になるが、尋ねるタイミングを見出せずにいる。
泉が椅子に座って弁当を取り出し、「おっ、ビリヤニだ」と微笑んだ。
「インド出張を思い出すよ」
「泉さん、海外よく行ってたんですか?」
「うん。出世してからはあんまりだったけど、若い頃はあちこち飛び回っていてね。インドは特に思い出深い」
「どうしてですか?」
「着いて早々、お腹がペコペコでね。商談の時間が迫っていたから、手短に食事を済ませようと思って適当な屋台のカレーを食べたら、腹痛で商談中に脂汗がダラダラ」
「えー……それで、どうしたんですか?」
「気合いで耐えたよ。その後は夜になってもトイレから出られなかった」
「うわー……」
泉が「今となっては楽しい思い出さ」と微笑む。
「た、楽しい?」
「そうさ。その時は辛くて大変でも、遠い過去として振り返ってみると懐かしく思うこともある。あの頃に戻りたいとさえ、ね」
「……また、お腹を壊したい?」
「それは嫌だけど、なんだろうなぁ……今だったら絶対にあの屋台で食事をしようと思わないから、当時の若さとか無鉄砲さとか、冒険していた頃の自分は、それはそれでよかったな、みたいな感じだよ」
憧憬に似た泉の表情に、仁愛は思う。
