あの橋の下の暗がりで、『今』に続く君を思う

 山田が弁当を袋に入れていく。仁愛はなおも断ろうと口を開きかけるが考え直し、

「ええっと……」当然、直巳の好物など知らない。「和風の、優しい感じの味付けの……」ゆえに八十年前の日本を想像して、勘で話す。

「和風かぁ……とりあえず、唐揚げ弁当入れとくね」
「ありがとうございます」
「あとは……うーん……そうなると、スパイス効いてるのはやめといた方がいいかな?」
「あっ、でも、カレーは食べるので」
「じゃあビリヤニも大丈夫かな。それから……そうだ! 今日のパエリアね、自信作なんだよ」
「あの、山田さん……」
「あとバインミーも入れとこ」
「そんないっぱい……」

 山田は次から次へと弁当を袋に詰めながら、「ピクニックはパアッとやらないとね!」と言って笑った。

     *

 ずっしりとした袋をぶら下げて、河川敷に続く階段を降りる。草むらを歩いて行くと、橋の下で仰向けに寝転がっていた直巳が、「あ?」とこちらを見た。

「お前、学校は?」

 仁愛が「日曜だから休み」と答えると、「ああ、そうか」と言って視線を戻す。

「何してんの?」
「あー……橋見てる」
「何それ」
「お前はまたなんで?」
「バイト先でお弁当いっぱいもらったから、この前のカレーのお礼も兼ねて、お昼一緒にどうかなって思って」

 直巳がむくりと起き上がる。それからこちらをじいっと見つめ、

「? 何、あたしの顔になんかついてる?」

 仁愛が尋ねると、「いや」と言って袋を覗き込んだ。

「何が何やらさっぱりだが、美味そうだな」
「泉さんいる?」
「ああ。……これ、三人分か?」
「なんかいっぱいもらっちゃったんだよね」