あの橋の下の暗がりで、『今』に続く君を思う

 その言葉に仁愛ははたと気づいて振り返り、

梛木(なぎ)仁愛(にいな)だよ。梛木の『な』は、ええっと……木へんに刹那の『()』がくっついた字で——」

 話し始めたところで、直巳が「ニーナ?」と片眉を上げた。

「あいつらが呼んでたの、あだ名じゃなかったのか?」
「? 本名だけど」
「お前、日本人じゃないのか?」
「……日本人だけど」
「そういえば、お前の近くにいた女は『エマ』とか呼ばれてたな。どういうことだ? 戦後連合軍に占領されて、女は外人みたいな名前にすることになったのか?」
「いや、全然そんなことないけど」

 直巳が不思議そうな顔をする。仁愛は「ちゃんと日本人の名前だよ。漢字だし」とため息をついた。

「『ニーナ』が漢字?」
「そう。仁義の『(じん)』に(あい)で『ニイナ』」
「……斬新な名前だな」
「あんただって斬新でしょ。その顔で『ナオミちゃん』とか」
「おい、『ちゃん』とか言うな」
「じゃあまたね、ナオミちゃん」

 仁愛は言って、歩き出す。公園を出ようとしたところで、直巳が「気ぃつけて帰れよ」と言った。