あの橋の下の暗がりで、『今』に続く君を思う

「あんたのバイト先、緩くていいね。その時間も時給出るんでしょ?」
「まあね」

 依茉が「うち、コンビニバイトやめようかなぁ」と言いながら伸びをする。「規則ガチガチでうざいんだよね」と続けたところで、向こうから金髪の男が近づいてきた。

「おっ、北高の制服じゃん。優等生〜」

 仁愛の制服を見て茶化すように言う彼は、依茉の幼馴染の小池(こいけ)大和(やまと)

 だるっとした黒のスウェットと金髪、ジャラジャラのピアスという組み合わせは絵に描いたような不良のそれだが、彼は北高より偏差値の高い南高の出身。仁愛より三つ年上の二十歳。

「『面白いこと』って何?」

 仁愛が依茉に尋ねると、大和が「慈善活動だ」と答える。

「社会のゴミを掃除して、街を綺麗にする」

 大和がニヤリと笑って踵を返し、依茉が「行こう」と言って歩き出す。他がそれについて行く姿を見て、仁愛の中に一抹の不安がよぎった。

 彼らが向かう方には相砂川がある。全長一〇〇キロメートルほどの一級河川。広い河川敷は夏のバーベキュースポットになっていて、ゴールデンウィークのバーベキューはそこでやった。

 それから、ここから徒歩五分ほどのところに橋があって、その周辺にはホームレスの人のブルーシート小屋がポツポツと建っている。

     *

 河川敷に降りて、橋の方へ。川の周囲は市営プールなどの公共施設や個人商店が並んでいるため、この時間になると静かだ。草むらを踏む数人分の足音しか聞こえない。

 ふと、大和が橋の下の暗がりを望み、「おお、いるいる」と軽い調子の声で言った。

「掃除してくださいって言ってるような感じだ」

 橋脚の傍らに、人が一人横たわっている。段ボール敷いて寝ているらしい。橋脚の方を向いて腕枕をしていて、顔は見えない。背格好は大和より一回り大きい、男。

(なんか、不思議……?)

 仁愛はその姿に内心で独りごちた。

 ボサボサの黒い短髪と、使い古した革のブーツ。同じく年季の入ったカーキ色のズボンを履いていて、元は白だったらしいシャツは何度も汚れて洗ったのか、あちこちほつれてくすんでいる。