七月中旬。梅雨明け間際の、珍しく月が見える夜。バイトを終えた梛木仁愛は、駅向こうの川沿いにあるコンビニへ向かって歩き出した。
(何するんだろう)
内心で発した問いの理由は、中学からの友人・水谷依茉からのメッセージ。
『面白いことやるから、八時に川沿いのコンビニに来て』
スマホのメッセージアプリに表示された文字列に、仁愛は『わかった』とだけ返信した。不思議に思うなら尋ねればいい話だが、そこまで気になるわけでもない。
踏切を渡り切ってすぐ、背後で警報機がカンカンと鳴り出した。人気のない住宅地の景色を、薄い赤の光が照らす。
(最後に依茉と連絡取ったの、ゴールデンウィークにみんなでバーベキューして以来だわ……てっきり忘れられたと思ってた)
依茉は出会った時点ですでにそれなりに完成した不良で、当時優等生をやっていた仁愛は、絶対に彼女と友達になることはないと思っていた。
その認識が覆ったのは、仁愛が優等生をやめた中学二年生の頃。依茉が話しかけてきて、なんとなく友達を始めた。
「あっ、仁愛やっと来た!」
コンビニの前に着くと、金髪のインナーカラーを入れた黒髪ボブの少女——依茉がスマホを持つ手を上げた。周りには彼女のお仲間の、柄の悪い男女が五人。
仁愛は現在高校二年生。依茉は別の学校の同学年で、お仲間は似たような歳の頃。髪色やらピアスやらが派手な若者がたむろする様は、ステレオタイプの『不良』の光景。
「遅いよー、待ちくたびれちゃった」
依茉がこちらへ駆け寄る。仁愛はスマホのロック画面の時計を見た。
現在時刻は午後七時五十二分。待ち合わせ時間前だが、依茉は自分の感覚だけを論拠にものを言う。出会った頃から彼女はこうだ。
優等生の側から見ていた頃は「変な人だな」と思ったけれど、今は「人間なんてこんなもの」と思っている。
「あれ? 仁愛、なんで制服?」
「学校終わった後そのままバイト行って、そこから来たから」
「ありゃ。じゃあ夜ご飯食べてないの?」
「ううん。バイトの合間に賄い食べた」
(何するんだろう)
内心で発した問いの理由は、中学からの友人・水谷依茉からのメッセージ。
『面白いことやるから、八時に川沿いのコンビニに来て』
スマホのメッセージアプリに表示された文字列に、仁愛は『わかった』とだけ返信した。不思議に思うなら尋ねればいい話だが、そこまで気になるわけでもない。
踏切を渡り切ってすぐ、背後で警報機がカンカンと鳴り出した。人気のない住宅地の景色を、薄い赤の光が照らす。
(最後に依茉と連絡取ったの、ゴールデンウィークにみんなでバーベキューして以来だわ……てっきり忘れられたと思ってた)
依茉は出会った時点ですでにそれなりに完成した不良で、当時優等生をやっていた仁愛は、絶対に彼女と友達になることはないと思っていた。
その認識が覆ったのは、仁愛が優等生をやめた中学二年生の頃。依茉が話しかけてきて、なんとなく友達を始めた。
「あっ、仁愛やっと来た!」
コンビニの前に着くと、金髪のインナーカラーを入れた黒髪ボブの少女——依茉がスマホを持つ手を上げた。周りには彼女のお仲間の、柄の悪い男女が五人。
仁愛は現在高校二年生。依茉は別の学校の同学年で、お仲間は似たような歳の頃。髪色やらピアスやらが派手な若者がたむろする様は、ステレオタイプの『不良』の光景。
「遅いよー、待ちくたびれちゃった」
依茉がこちらへ駆け寄る。仁愛はスマホのロック画面の時計を見た。
現在時刻は午後七時五十二分。待ち合わせ時間前だが、依茉は自分の感覚だけを論拠にものを言う。出会った頃から彼女はこうだ。
優等生の側から見ていた頃は「変な人だな」と思ったけれど、今は「人間なんてこんなもの」と思っている。
「あれ? 仁愛、なんで制服?」
「学校終わった後そのままバイト行って、そこから来たから」
「ありゃ。じゃあ夜ご飯食べてないの?」
「ううん。バイトの合間に賄い食べた」
