先輩、好きになってもいいですか。

「先輩、かまくらいつ行きますか?」
「ああ」
かまくら。
指輪を作りに行った時、本当はかまくらの中でお鍋が食べられるお店にも行く予定だった。
けれど折れていた足が、痛いとまではいかないけれど、少し違和感が出てき始めていて。
ちょっと足に違和感があるかも?と言えば即タクシーを呼びそうになった西宮を大慌てで止めて、自力で帰ってきて、早一週間。
世話焼きがまた加速した西宮に見守られながら年が明けて、今は幸せそうに口から餅を伸ばしている西宮を眺めながら、かまくらなぁ、と考える。
「かまくらはさ、いつでも行けるっちゃ行けるだろ」
「ふぁい、冬なら!」
「でも初めての指輪が嬉しくて仕方ない俺は、多分、今しかないだろ」
「ふぁ……へ?」
餅を頬張っていて可愛い西宮が、俺の言葉を正しく解釈しようとしてその動きを止める。
だから箸を置いて西宮に少し寄ると、じわりと赤くなる耳が見えて、少し心が満たされた。
「今はかまくらより西宮の傍に居たい」
「っごふ」
「おい!」
餅はお前、詰まらせたら洒落にならないぞ!と背中を擦れば、「トキメキのキャパオーバーで咳き込んだだけです」と、赤い顔で引き続き咀嚼しているから安心する。
それからしっかりと餅を飲み込んだ西宮が、ゆっくりと水を飲んでこちらを向いて、俺の手を握るから、何かおかしいぞ、と思う。
「さ、ベッドへ行きましょうか」
「行かねぇよ!」
「ええっ!?」
俺は照れた西宮を見られて満足だったのに、西宮はこれから満足しようという気らしい。
とりあえず食べてからだと言えば、俺を強制的に持ち上げようとしていた西宮は動きを止めて、お行儀よくまた餅を食い始める。
「食べてからですねっ」
「…………するとは言ってない」
「……」
「まてまてまて!!」
納得したかと思いきや、また俺を抱え上げようと寄ってくるから慌てて止めて、頷く。
指輪作りの工房へ行って以来、思ったことはなるべく素直に言おうと改めて努力をしている。
けれどソウイウお誘いはなかなか、余程のことがないと素直にはなれなくて。
全然嫌じゃない、でも恥ずかしい。
だから積極的な西宮に助かっている節もあって、けれどいつも甘えてるばかりじゃだめで、でもやっぱり恥ずかしくて。
「あと、で、な」
「……」
「ちょ、おいこらっ、なんでだよ!」
「そんな真っ赤な顔で言われたら!今すぐしかないです!」
「うわああ落ちる!」
二度阻止できた抱き上げは、今度こそ強行突破されて体が浮く。
焦って西宮に抱き付けば、更にぎゅっと抱える腕に力が込められて息が漏れた。
恥ずかしいけれど、ちゃんと言ったのに逆効果だなんて。
西宮マスターの道はまだまだ遠いなと思って、それからまだテーブルにある餅は、後でお雑煮風に汁物に入れて救おうと決めた。

「西宮」
「はい」
「一年だぞ」
「はいっ!」
西宮と付き合って、一年が経った。
三ヶ月後にあれだけビビっていたのに、思い返せば一年なんてあっという間だった。
特にこの冬は寒さのあまり、西宮にひたすらくっついていたらいつの間にか春を迎えていて。
そうやってあっという間だと思えるほどに、西宮は変わらず傍で、キラキラとした笑顔をずっと見せ続けてくれている。
「好きだ」
「はい!俺も大好きです!」
「愛してるぞ」
「うっ、あ、俺も、愛してます」
「ふふん」
相変わらず愛してるには弱い西宮が可愛い。
両腕を伸ばしておねだりすれば、抱き締めてくれる西宮が愛しい。
そのまま俺を抱き上げて、連れ去る西宮は、悔しいが正直かっこいい。
それからTシャツを脱ぎ捨てて、俺に被さってくる西宮は何度見ても胸が高鳴る。
「なあ」
「はい!」
「しないで、してみる?」
「は……え」
「陸」
「っは、」
「めちゃくちゃにして」
俺は多分、舞い上がっていた。
いや。
多分じゃなくて、確実に。
初めて西宮を下の名前で呼んで、首を掴んで抱き寄せて、耳元で囁くくらいにはテンションが上がっていた。
余程のことがないと誘えない俺の、余程のことが、今だった。
だって、あっという間だったけれど、一年は重く、確かに積み重ねたという感覚があるから。
もう何年も同じ人と付き合っている島田に聞かれたら、笑われるかもしれないけれど。
確かにこの一年は、俺と西宮が二人で積み重ねた月日で。
だから気持ちが昂っていた。
だから、煽り過ぎてしまった。
「い……一ヶ月は休みをくれ」
「いいい一ヶ月!?無理です!!」
「……俺も無理かも」
結局、四日がお互いの限界だった。
無理させまいと耐える西宮が可愛くて、結局俺が四日目に甘えて崩した。
でも耐える西宮が可愛かったから、今後もそういう期間を取り入れてみるか、って言うと半泣きで抱き付かれて笑った。
大丈夫だよ、陸。
俺も結構お前にメロメロなんだからな。