「実は俺も、ささやかですがお祝いを用意してまして」
「え?」
「指輪作りが体験できる工房の予約を取りました。冬休みの期間で、日帰り旅行に行きませんか」
「……ええっ」
どこがささやかなんだよと肩でぶつかると、西宮はくすぐったそうに笑って、先輩のおもてなしには敵いません、と言うからむずがゆい。
お礼代わりのキスを贈れば、俺以上に嬉しそうにするから余計に照れた。
「近くにかまくらの中でお鍋が食べられるお店もありますよ」
「なんだそれ最高だな」
「指輪よりも反応がいい!?」
「ばーーか」
指輪は照れてんだよと言えば、直ぐに納得して満足そうにしているからチョロい。
でも実際、本当にそうだった。
まさか指輪を自分たちで作るなんて。
どの指に嵌める指輪だろうかと自分の指を眺めていたら、左手を西宮に取られて、薬指にキスされるからその頬を抓った。
「いだいっ」
「どこの王子様だよ」
「先輩のです!」
「はいはい」
嬉々と宣言する西宮の左手を取って、お返しに薬指を噛んで舐める。
それだけで顔を真っ赤にしているから俺の王子様は初心で可愛い奴だった。
「俺の王子様だってよ」
「はあああ、イイネ」
「ふん」
島田は最近、彼女との惚気話をしてくるようになった。
急になんだよと言えば、周りに言える奴が居ないから、とのことで。
付き合っては別れてを繰り返していた頃の俺には一切惚気けてこなかったし、西宮との三ヶ月後を怯えていた頃の俺にも惚気けてこなかったところを見ると、ちゃんと惚気ける相手を見て言っているのだなとは分かる。
だから聞いてやる代わりに、俺も惚気けて西宮の可愛さを発散していた。
あいつの可愛さはまたキャパオーバーになるとキュートアグレッションになるからな、と思って。
そうして惚気話を食らわされては食らわすの攻防を繰り返し、何だかんだ島田とも仲良く過ごしていた。
「俺最近飲み会控えてるんだよな」
「ああ、そういや呼ばれなくなったな」
「彼女がさ、本当は寂しかったみたいで」
「へーーーーえ」
「お前の王子サマも心配性だしな」
「あ?西宮?」
なんで急に西宮。
そう思って聞き返せば、島田はきょとんとしていて。
「あれ、気付いてなかった?お前が他の奴に話しかけられそうになると、西宮君がガードしてたの」
「ガードぉ?」
思い返しても、酒を飲まされそうになった時は防いでくれていたことしか覚えていない。
首を横に振れば、島田は楽しそうにいろいろ教えてくれた。
「王子様、俺を守ってくれてたのか」
「へ?」
泊まりに来た西宮に言えば、きょとんとしながら残ったらっきょうをつまんでいる。
島田のきょとんとした顔には一切湧かなかった可愛いという感情に、俺はやっぱり西宮が好きなのだなと変なところで再認識した。
「飲み会で俺が狙われそうになるたび、メニューで隠してくれてたって?」
「……はっ」
心当たりを見つけたのか、短く息を吐いて固まっている西宮。
その頬を両手の平で挟み込んで上下に揺らすと、少しだけ笑った西宮は頷いた。
「その……はい。皆さん酔って下ネタとかも話されてましたから。先輩はシラフだったし、でも差し出がましかったです、すみません」
「いやいや違うぞ、助かったありがとうって話だ」
「……それならよかったです、へへ」
照れて笑っている西宮に、キスをする。
お礼のキスは王子様らしくない、けれどどこか安心する、らっきょうの味がした。
「先輩はお酒好きですか?体質的に弱いだけ?」
「んーどうだろ、味わう前に酔うからな。甘くないやつは慣れてなくて変な味って思うな」
「変な味……ふふ」
「ああ?ばかにしたか?」
両手で挟んだままだった西宮の頬に圧を掛けると、むふむふ何かを言うので少し緩める。
でもちょっと可愛かったのでまた少し圧をかけて、タコみたいになっている口を見て楽しんだ。
「しぇんぱいが可愛いって思っただけでひゅ」
「聞こえね~」
「ひこえてるでひょ!」
「っふ」
喋りにくいだろうに、必死で伝えようとしていて面白可愛い。
けれどちょっと高い位置から俺を見下ろす目に、欲が宿った気がしてその手を離した。
「先輩、俺の前でだけなら飲んでも良いですよ」
「あ?」
「他ではだめです。赤い顔した先輩とっても可愛いんだから」
「はああ?」
なんだ突然、と少し身を引けば、その分だけ迫ってくる西宮。
あ、スイッチ入りやがった、と思った時にはもう遅くて、腰に腕を回されて、引き寄せられて、耳にキスされるから吐息が漏れる。
「っは」
「目も潤んで、本当に可愛いんです。初めて会った日は泣いちゃって余計クタクタだったし、俺襲わないように必死だったんですからね」
「んっ、ま、て、耳元やめろっ」
「わざとです、先輩」
「っん」
酒を飲むと俺の目が潤むと西宮は言った。
けれど今、酒を飲んでもいないのに目が潤む。
背筋も腰もゾクゾクして止まらなかった。
さっきまでタコ口で面白可愛い顔してた癖に、なんだこれ、豹変するなよばか。
何かに掴まりたくて、西宮の背に腕を回すと、俺の腰を抱く西宮の腕にも力が籠る。
そのまま西宮の服を掴めば、首筋にキスをされて体の力が抜けた。
「刺激にだってこんなに弱いし。もう外で飲んじゃだめですよ」
「……は」
「約束して、先輩」
「……あ?」
あまり聞けていなくて、聞き返せば首をキツく吸われて。
息を吐けばまた西宮の抱擁が強くなる。
西宮の香りが、強くなる。
「俺から離れないでってことです」
「んっ」
俺の好きな声がする。
鼓膜に響く、大好きな声。
訳も分からず頷けば、そのまま押し倒されて西宮が離れていく。
無くなった圧と温かさに腕を伸ばせば、俺の顔を見た西宮がちょっと微笑んで、また後で言いますね、と小さく宣言した。
「約束する気になりました?」
「だからなんのだよ……!」
掠れた声で返して睨めば、西宮は愛しい、みたいな目を向けてくる。
あれから散々触れられて、甘やかされて、愛されて。
定期的に「約束して」って言葉が降ってくるから、なんの、って返すのに全然答えは返ってこなかった。
だから今、また改めて聞いている。
西宮はずっと幸せそうに笑っている。
「外でお酒飲んじゃだめです」
「……ああ、分かった」
「っほんとですか?約束ですよ?」
「うん」
元から別に飲まないしな、と思って目を閉じる。
擦り寄ってきた西宮はまだ何か言っている。
「俺が一緒の時は良いです。でも他の人の目がある時はだめです」
「はいはい」
「俺がお酒飲める年になったら一緒に飲みましょうね」
「うん」
「酔った先輩は可愛いから時々見せてくださいね」
「うん……ん?」
「へへ」
ほどよく疲れていて、眠くて、聞いてはいるけれど、反射で返事をしていて。
だから何か、どさくさに紛れて変な約束をさせられた気がする。
けどまあいいか、西宮が幸せそうだし。
満足したのか大人しくなった西宮に柔いキスを落とされて、目を閉じたまま西宮に寄れば、そのまま優しく抱き締められて。
俺たちは二人で仲良く眠りに就く。
西宮の体温が心地よくて、そろそろ秋だなと薄れゆく意識の中で思った。
「え?」
「指輪作りが体験できる工房の予約を取りました。冬休みの期間で、日帰り旅行に行きませんか」
「……ええっ」
どこがささやかなんだよと肩でぶつかると、西宮はくすぐったそうに笑って、先輩のおもてなしには敵いません、と言うからむずがゆい。
お礼代わりのキスを贈れば、俺以上に嬉しそうにするから余計に照れた。
「近くにかまくらの中でお鍋が食べられるお店もありますよ」
「なんだそれ最高だな」
「指輪よりも反応がいい!?」
「ばーーか」
指輪は照れてんだよと言えば、直ぐに納得して満足そうにしているからチョロい。
でも実際、本当にそうだった。
まさか指輪を自分たちで作るなんて。
どの指に嵌める指輪だろうかと自分の指を眺めていたら、左手を西宮に取られて、薬指にキスされるからその頬を抓った。
「いだいっ」
「どこの王子様だよ」
「先輩のです!」
「はいはい」
嬉々と宣言する西宮の左手を取って、お返しに薬指を噛んで舐める。
それだけで顔を真っ赤にしているから俺の王子様は初心で可愛い奴だった。
「俺の王子様だってよ」
「はあああ、イイネ」
「ふん」
島田は最近、彼女との惚気話をしてくるようになった。
急になんだよと言えば、周りに言える奴が居ないから、とのことで。
付き合っては別れてを繰り返していた頃の俺には一切惚気けてこなかったし、西宮との三ヶ月後を怯えていた頃の俺にも惚気けてこなかったところを見ると、ちゃんと惚気ける相手を見て言っているのだなとは分かる。
だから聞いてやる代わりに、俺も惚気けて西宮の可愛さを発散していた。
あいつの可愛さはまたキャパオーバーになるとキュートアグレッションになるからな、と思って。
そうして惚気話を食らわされては食らわすの攻防を繰り返し、何だかんだ島田とも仲良く過ごしていた。
「俺最近飲み会控えてるんだよな」
「ああ、そういや呼ばれなくなったな」
「彼女がさ、本当は寂しかったみたいで」
「へーーーーえ」
「お前の王子サマも心配性だしな」
「あ?西宮?」
なんで急に西宮。
そう思って聞き返せば、島田はきょとんとしていて。
「あれ、気付いてなかった?お前が他の奴に話しかけられそうになると、西宮君がガードしてたの」
「ガードぉ?」
思い返しても、酒を飲まされそうになった時は防いでくれていたことしか覚えていない。
首を横に振れば、島田は楽しそうにいろいろ教えてくれた。
「王子様、俺を守ってくれてたのか」
「へ?」
泊まりに来た西宮に言えば、きょとんとしながら残ったらっきょうをつまんでいる。
島田のきょとんとした顔には一切湧かなかった可愛いという感情に、俺はやっぱり西宮が好きなのだなと変なところで再認識した。
「飲み会で俺が狙われそうになるたび、メニューで隠してくれてたって?」
「……はっ」
心当たりを見つけたのか、短く息を吐いて固まっている西宮。
その頬を両手の平で挟み込んで上下に揺らすと、少しだけ笑った西宮は頷いた。
「その……はい。皆さん酔って下ネタとかも話されてましたから。先輩はシラフだったし、でも差し出がましかったです、すみません」
「いやいや違うぞ、助かったありがとうって話だ」
「……それならよかったです、へへ」
照れて笑っている西宮に、キスをする。
お礼のキスは王子様らしくない、けれどどこか安心する、らっきょうの味がした。
「先輩はお酒好きですか?体質的に弱いだけ?」
「んーどうだろ、味わう前に酔うからな。甘くないやつは慣れてなくて変な味って思うな」
「変な味……ふふ」
「ああ?ばかにしたか?」
両手で挟んだままだった西宮の頬に圧を掛けると、むふむふ何かを言うので少し緩める。
でもちょっと可愛かったのでまた少し圧をかけて、タコみたいになっている口を見て楽しんだ。
「しぇんぱいが可愛いって思っただけでひゅ」
「聞こえね~」
「ひこえてるでひょ!」
「っふ」
喋りにくいだろうに、必死で伝えようとしていて面白可愛い。
けれどちょっと高い位置から俺を見下ろす目に、欲が宿った気がしてその手を離した。
「先輩、俺の前でだけなら飲んでも良いですよ」
「あ?」
「他ではだめです。赤い顔した先輩とっても可愛いんだから」
「はああ?」
なんだ突然、と少し身を引けば、その分だけ迫ってくる西宮。
あ、スイッチ入りやがった、と思った時にはもう遅くて、腰に腕を回されて、引き寄せられて、耳にキスされるから吐息が漏れる。
「っは」
「目も潤んで、本当に可愛いんです。初めて会った日は泣いちゃって余計クタクタだったし、俺襲わないように必死だったんですからね」
「んっ、ま、て、耳元やめろっ」
「わざとです、先輩」
「っん」
酒を飲むと俺の目が潤むと西宮は言った。
けれど今、酒を飲んでもいないのに目が潤む。
背筋も腰もゾクゾクして止まらなかった。
さっきまでタコ口で面白可愛い顔してた癖に、なんだこれ、豹変するなよばか。
何かに掴まりたくて、西宮の背に腕を回すと、俺の腰を抱く西宮の腕にも力が籠る。
そのまま西宮の服を掴めば、首筋にキスをされて体の力が抜けた。
「刺激にだってこんなに弱いし。もう外で飲んじゃだめですよ」
「……は」
「約束して、先輩」
「……あ?」
あまり聞けていなくて、聞き返せば首をキツく吸われて。
息を吐けばまた西宮の抱擁が強くなる。
西宮の香りが、強くなる。
「俺から離れないでってことです」
「んっ」
俺の好きな声がする。
鼓膜に響く、大好きな声。
訳も分からず頷けば、そのまま押し倒されて西宮が離れていく。
無くなった圧と温かさに腕を伸ばせば、俺の顔を見た西宮がちょっと微笑んで、また後で言いますね、と小さく宣言した。
「約束する気になりました?」
「だからなんのだよ……!」
掠れた声で返して睨めば、西宮は愛しい、みたいな目を向けてくる。
あれから散々触れられて、甘やかされて、愛されて。
定期的に「約束して」って言葉が降ってくるから、なんの、って返すのに全然答えは返ってこなかった。
だから今、また改めて聞いている。
西宮はずっと幸せそうに笑っている。
「外でお酒飲んじゃだめです」
「……ああ、分かった」
「っほんとですか?約束ですよ?」
「うん」
元から別に飲まないしな、と思って目を閉じる。
擦り寄ってきた西宮はまだ何か言っている。
「俺が一緒の時は良いです。でも他の人の目がある時はだめです」
「はいはい」
「俺がお酒飲める年になったら一緒に飲みましょうね」
「うん」
「酔った先輩は可愛いから時々見せてくださいね」
「うん……ん?」
「へへ」
ほどよく疲れていて、眠くて、聞いてはいるけれど、反射で返事をしていて。
だから何か、どさくさに紛れて変な約束をさせられた気がする。
けどまあいいか、西宮が幸せそうだし。
満足したのか大人しくなった西宮に柔いキスを落とされて、目を閉じたまま西宮に寄れば、そのまま優しく抱き締められて。
俺たちは二人で仲良く眠りに就く。
西宮の体温が心地よくて、そろそろ秋だなと薄れゆく意識の中で思った。



