「(あーーーー、カモられてんなぁ)」
先程からやたらと届いてくる声に意識を集中させると、聞こえてくるのは詐欺みたいな会話で。
「まっじで良いから!このカメラ!」
「は、はあ……」
「すげぇんだって、な、買おうぜ!」
「いやぁ……」
少し体を動かすフリでその声の方を見遣れば、高そうなカメラを見せつけている年上っぽい男と、苦笑いで曖昧で頷いている一年生っぽい男。
嫌ならハッキリ言えよ、と思いながら俺は手に持っていた烏龍茶を飲み干す。
暇なら来いよ、って誘われた大学の飲み会は、いざ来てみれば誰も知らない人だらけで。
おまけに皆よそよそしいから、全員俺みたいに適当に声をかけられたんだろうなと思う。
俺は酒に酔った陽気な人間を見るのが好きだからここに来たのに、皆陽気になるほど酒に酔えていなくて勿体ない。
そんなことを考える俺は酒にてんで弱くて、飲むのはいつも烏龍茶なのだけれど。
このことを人に話すといつも変な趣味、と言われるが、自分ではできないからこそ、できる人の様子を見て楽しむってこともあるだろ、と思う。
「今なら先輩の紹介で半額になるからさぁ」
「半額……」
いや、グラついてんなよ。
未だ聞こえるその声に、俺の中には苛立ちだかツッコミだか分からない感情が湧く。
そもそも元値はいくらなんだよ、そのカメラ。
実際に撮れた写真は見せてもらったのかよ。
てか本当にカメラが趣味ならこんな怪しい先輩から怪しいカメラ買ってちゃダメだろ。
俺は近くにあったまだ手が付けられていないままのハイボールを手に取って、立ち上がる。
それから座敷を迷わず進んで、カモり男の隣に勢いよく座った。
「先輩、それ俺にも紹介してくださいよ」
「えっ」
「ちょっと聞こえたんすけど、すげぇんでしょそのカメラ。どうすげぇんすか?俺カメラ趣味なんですよね」
笑顔を見せながら、ゴン、と威圧するようにテーブルにハイボールのグラスを置けば、その先輩は明らかに動揺して目を泳がせている。
「あ、あー……これはちょっと〜~、特殊なやつだから、はは」
「へえ、そっすか。残念です」
微塵も残念とは思っていないけれど、悲しそうな顔を作って、退席する隙を作ってやる。
そうすればカモり男は立ち上がって、そそくさとどこかへ逃げて行った。
「あ、あの」
「お前、嫌ならハッキリ嫌って言えよ?」
とりあえず救出はできた。
が、こいつが変わらないことにはまた同じことが起きかねないので忠告する。
ついでに持ってきたハイボールを差し出すと、忠告した直後なのに素直に受け取るから、本当に大丈夫かこいつ、と眉を寄せた。
「あ、はい、あの」
怯えたような、戸惑ったような声を出しながらも、ハイボールのグラスに付いた水滴を撫でる手が妙に色っぽい。
それに近くに来ると、余計に感じる。
こいつの声は、この騒がしい店内でもよく届く。
「助けてくれて、ありがとうございます」
「……ああ」
なんだ、ちゃんと笑えるんだな、こいつ。
ずっと困ったような、眉を下げた笑顔を携えていたから、それがこいつの笑顔なのかと思っていたけれど。
本当の笑顔は無防備で、年相応に幼くて、それから少し、可愛かった。
「(……ん?)」
胸がきゅっとしたのはきっと気のせいだと思う。
俺はハイボールを取り上げると、ちょっと飲んでから顔をしかめる。
やっぱり酒は味がよく分からん。
それから喉が熱くて、顔まで全部熱くなるのが分かる。
「だ、大丈夫ですか?」
急激にぼーっとしてくる頭でも、こいつの声はよく分かるから不思議だった。
先程からやたらと届いてくる声に意識を集中させると、聞こえてくるのは詐欺みたいな会話で。
「まっじで良いから!このカメラ!」
「は、はあ……」
「すげぇんだって、な、買おうぜ!」
「いやぁ……」
少し体を動かすフリでその声の方を見遣れば、高そうなカメラを見せつけている年上っぽい男と、苦笑いで曖昧で頷いている一年生っぽい男。
嫌ならハッキリ言えよ、と思いながら俺は手に持っていた烏龍茶を飲み干す。
暇なら来いよ、って誘われた大学の飲み会は、いざ来てみれば誰も知らない人だらけで。
おまけに皆よそよそしいから、全員俺みたいに適当に声をかけられたんだろうなと思う。
俺は酒に酔った陽気な人間を見るのが好きだからここに来たのに、皆陽気になるほど酒に酔えていなくて勿体ない。
そんなことを考える俺は酒にてんで弱くて、飲むのはいつも烏龍茶なのだけれど。
このことを人に話すといつも変な趣味、と言われるが、自分ではできないからこそ、できる人の様子を見て楽しむってこともあるだろ、と思う。
「今なら先輩の紹介で半額になるからさぁ」
「半額……」
いや、グラついてんなよ。
未だ聞こえるその声に、俺の中には苛立ちだかツッコミだか分からない感情が湧く。
そもそも元値はいくらなんだよ、そのカメラ。
実際に撮れた写真は見せてもらったのかよ。
てか本当にカメラが趣味ならこんな怪しい先輩から怪しいカメラ買ってちゃダメだろ。
俺は近くにあったまだ手が付けられていないままのハイボールを手に取って、立ち上がる。
それから座敷を迷わず進んで、カモり男の隣に勢いよく座った。
「先輩、それ俺にも紹介してくださいよ」
「えっ」
「ちょっと聞こえたんすけど、すげぇんでしょそのカメラ。どうすげぇんすか?俺カメラ趣味なんですよね」
笑顔を見せながら、ゴン、と威圧するようにテーブルにハイボールのグラスを置けば、その先輩は明らかに動揺して目を泳がせている。
「あ、あー……これはちょっと〜~、特殊なやつだから、はは」
「へえ、そっすか。残念です」
微塵も残念とは思っていないけれど、悲しそうな顔を作って、退席する隙を作ってやる。
そうすればカモり男は立ち上がって、そそくさとどこかへ逃げて行った。
「あ、あの」
「お前、嫌ならハッキリ嫌って言えよ?」
とりあえず救出はできた。
が、こいつが変わらないことにはまた同じことが起きかねないので忠告する。
ついでに持ってきたハイボールを差し出すと、忠告した直後なのに素直に受け取るから、本当に大丈夫かこいつ、と眉を寄せた。
「あ、はい、あの」
怯えたような、戸惑ったような声を出しながらも、ハイボールのグラスに付いた水滴を撫でる手が妙に色っぽい。
それに近くに来ると、余計に感じる。
こいつの声は、この騒がしい店内でもよく届く。
「助けてくれて、ありがとうございます」
「……ああ」
なんだ、ちゃんと笑えるんだな、こいつ。
ずっと困ったような、眉を下げた笑顔を携えていたから、それがこいつの笑顔なのかと思っていたけれど。
本当の笑顔は無防備で、年相応に幼くて、それから少し、可愛かった。
「(……ん?)」
胸がきゅっとしたのはきっと気のせいだと思う。
俺はハイボールを取り上げると、ちょっと飲んでから顔をしかめる。
やっぱり酒は味がよく分からん。
それから喉が熱くて、顔まで全部熱くなるのが分かる。
「だ、大丈夫ですか?」
急激にぼーっとしてくる頭でも、こいつの声はよく分かるから不思議だった。


