ひとり応じたのがいけなかったか、ちょっとした写真の列ができてしまった。
すると、教室の中の女子が、
「大木くん、中入って、中」
「え?なに?」
「教室入って」
言われるがまま、教室に入る。
すると、その女子が、
「バニーくんとの撮影希望の人はこちらですよー!お菓子買うと特典つきまーす!」
とアナウンスした。
……え?
俺、特典?
あっという間に女子の列ができた。
お菓子の売り上げは好調、だけどさ。
……俺って、なんなの?
俺の隣に並んでカメラに収まる彼女たちは、みんな嬉しそうな顔をする。
でも、それが目の前の出来事とは思えなかった。
ちょっと離れて眺めてる俺がいた。
これ、俺じゃなくてもいいんじゃない?
等身大パネルでも置いとけば?
その時、教室の入口に早紀がいるのに気がついた。
ごめん、これじゃいっしょに回れないね。
早紀に手を合わせて謝ろうとした時、早紀は困ったような、でも、まんざらでもないような表情をした。
え。
どうして。
俺は、売り上げのために笑顔を作り続けた。
文化祭が終わったあと、ようやく早紀と話せた。
「歩、すごい人気だったね」
「いっしょに回れなくてごめん」
「ううん。大丈夫だよ」
「さすがにちょっと疲れた」
「お疲れさま。そりゃ疲れるよね。列になってたもん」
「うん」
「私の後輩も並んでたらしいよ」
早紀はどことなく嬉しそうだ。
「そうだったんだ」
「後輩、歩のこと、めっちゃかっこいいって言ってた」
「うん」
「なんか、幸せ」
「なんで?」
「こんなかっこいい彼氏がいるんだもん」
その言葉に、俺の心は軋んだ。
早紀は何も悪くない。
わかってる。
わかってるけど。
どうしてこんなに苦しいんだろう。



