これからの色

川べりに腰掛ける。
対岸の屋台の光が揺れていた。
しばらくすると、花火が上がり始めた。
ひゅるるるると空に登る光の筋を追いかける。
空に大輪の花が咲くと、どんっと胸に響いた。
「綺麗だな」
見上げながらぽつり呟くと、隣から視線を感じた。
「どうしたの?」
「ううん」
「なに?」
「いいの」
「気になるなぁ」
そう言うと早紀は恥ずかしそうに、
「あのね、花火見てる歩の横顔が綺麗だったから」
と言った。
「俺見てないで、せっかくなんだから花火見なよ」
花火はすぐ消えちゃうんだから。
俺は小さく笑った。

儚い光を何度も見上げているうちに、花火大会は終わった。
花火はこの刹那的な感じがいい、と思った。

人の群れが一気に動き出す。
俺たちもそこに紛れながら駅までの道を歩いていた。
早紀ははぐれないように俺の手をしっかり握っている。
人の流れのまま歩いていると、木陰で泣いている小さな男の子が見えた。

どうして誰も声をかけないんだろう。
歩きながらしばらく様子を見ていたが、やはり放っておけず、
「ちょっとごめん」
と早紀の手を離し、
「どうした?大丈夫?」
と、しゃがんで声をかけた。
男の子は、
「パパぁ」
としゃくりあげている。
「パパ、いなくなっちゃった?」
男の子はこくりとうなずいた。
「うん、大丈夫。探そうね」
小さな肩を撫でると、男の子はうなずいた。
男の子を抱き上げる。
「パパ、どこでいなくなったの?」
「……わかんない」
「いつのまにかいなくなっちゃった?」
「うん」
「そっかぁ」
困ったな。
「迷子の放送してもらえるとこ、ないかな」
「早紀、ナイス。そうしよう」
男の子を抱っこしたまま本部を探そうとした時、
「パパ!」
「え?」
「パパ!」
男の子が叫んだ。
「どこどこ」
きょろきょろしているうちに、ひとりの男性が近づいてきた。
「すみません!ご迷惑おかけして」
「パパぁ」
下ろしてあげると、男の子はパパの足にしがみついた。
「ああ、よかった」
「ありがとうございました」
男性は深々と頭を下げて、男の子を抱き上げた。
ふたりの後ろ姿を眺めてほっとした。
「歩、優しいね」
「泣いてたから」
「さっき通りかかった人も言ってた。かっこいい人が迷子助けてる、って」
「そう」
それ以上、言葉が出てこなかった。

……なんだろう。
胸の奥に小さな石がまたひとつ落ちた気がした。