これからの色

放課後は、図書室に残って勉強するようになった。
そこには同じように頑張る同級生たちがいたから、俺もやらなきゃという気持ちになれた。

ふと窓の外を見る。
どんよりしていた。
降るかもしれないな。
雨とアスファルトの混ざった匂いは、嫌いじゃない。
なぜかと言われても困るが、あえて言うなら空気が変わるからかもしれない。

閉館時間になり、図書室を出ると早紀が待っていた。
「教室で友達と勉強してた」
「そっか」
「いっしょに帰ろ」
「うん」
窓の外を見ると、雨が降り始めていた。

昇降口で靴を履き、リュックの中の折り畳み傘を探す。
「あれ」
入れたつもりだったんだけどな。
「どうしたの?」
「傘、忘れたかも」
すると早紀は、
「入ってく?」
と淡いピンク色の傘を広げた。
「助かる」
俺はそのピンクの傘を受け取った。
「俺の方が背が高いから」
早紀は嬉しそうだった。

体を寄せ合ってひとつの傘に入る。
どうしたって片側が濡れてしまう。
「ごめん、俺のせいで早紀まで濡れるね」
「ううん、平気」
傘を少し早紀の方へ傾ける。
「あ、大丈夫だよ。それだと歩、ほとんど入ってないじゃん」
そう言って早紀は傾けた傘の柄を真っ直ぐに直した。
「俺、こういうしとしと雨、嫌いじゃないんだよね」
「そうなんだ」
雨が地面と傘を弾く。
信号機の光が地面にゆらりと映っていた。
「今日ね、廊下歩いてたら1年の子が歩のことかっこいいって言ってるの、聞こえてきたよ」
「そうなんだ」
「……みんな歩のこと見るもんね」
早紀は少しうつむいた。
「私は釣り合ってないかもなぁ」
「なんで?」
「だって普通だもん」
「俺だって普通じゃん」
「え、歩、普通とか言わない方がいいよ。嫌味になっちゃうよ?」
「なんで?」
「歩はかっこいいもん」
「そうかな」
「そうだよ」

木の雫が不規則に傘に落ちてきた。
リズムがおもしろかった。