「なんか神原くん最近よくない?」
「わかる!前はさ。とっつきにくかったのに最近はなんかやわらかいよね」
「しかも頭も良いし、顔も良いし、運動もできるし」
女子達が何やら騒いでいる。その横では、美羽が別の女子たちに囲まれていた。
「ねぇー!美羽ってさ。神原くんの幼馴染でしょ?」
「彼女とかいるのかな?」
そう言われている美羽が、困ったように笑っている。……やっぱり可愛い。
放課後。僕の家のベッドで、美羽がごろりと転がっている。
「なーんか、面白くないなー」
「じゃあ、ゲームでもする?それとも漫画もあるよ。美羽が好きそうなゾンビのやつ」
ベッドの下に座っていた僕を見て、美羽がゆっくりと起き上がる。
「違う」
僕には何のことか分からず、首を傾げる。
「むっくんがモテてる」
そう言って、美羽は頬杖をついた。
「僕?」
「聞こえたでしょ?かっこいいって」
「あー、美羽は?」
「何が?」
「僕かっこいい?」
「そうだなぁ」
美羽が考えるように呟きながら、人差し指で僕の顎をちょんと持ち上げる。
「顔は良い」
「ふふ、嬉しい」
その言葉を聞いた途端、美羽はさらに不機嫌そうな顔をした。そして、どこからか取り出した手錠を、指でくるくると回す。
「ねぇ、むっくん。手だして」
言われた通り、手を差し出す。
「むっくんの手大きいね」
美羽が僕の手を撫でるように指を滑らせ――ガチャリ。
「え?」
思わず顔を上げる。手首には、銀色の手錠が嵌められていた。
「いいね…似合ってる」
美羽が楽しそうに笑う。……可愛い。
「ありがとう」
「なんで嬉しそうなの?」
美羽が怪訝そうな顔をする。
「だって、美羽に監禁されるのって最高じゃない?僕のことそばに置きたいってことだよね?」
そう言うと、美羽は少し考えるように首を傾げた。
「うーん、確かに。むっくんの作るクロワッサンもアップルパイも美味しいよね。無性に食べたくなることがある」
「いくらでも作るよ」
そう笑う。
「ねぇ、それって私にだけ?」
美羽は首を傾げながら、手錠の嵌められた僕の手首を指先でなぞる。じゃらり。鎖が小さく鳴った。
「当たり前でしょ。誰か他のゴミどもにつくるの?意味がわからない」
真顔で答えると、美羽は嬉しそうに笑った。
「むっくんはそれでいい。私のことずーっと見ててね?」
「当たり前、見ないでっていわれても見るけど」
そう答えると、美羽がふふっと笑った。
「それよりさ。委員長が言ってたんだ。自分のものにならないなら、せめて素敵な人と一緒になってほしいって……美羽は、どう思う?」
僕が尋ねると、美羽は足を組み替えながらこちらを見る。
「私の幸せを願うなら……私のことを愛してて、顔も良くて、頭も良くて、お金も持ってて、性格も良い男と一緒になるべき、ってこと?」
「……うん」
僕は頷く。美羽は少し考えて、首を傾げた。
「でも、それって私が決めることじゃない?私が誰を好きになるかなんて、私の自由でしょ」
あまりにもあっさりと言う。
「だから誰かに『こっちのほうが幸せだよ』って決められても、困るかな」
「……そっか」
「私だって、むっくんと一緒にいたいから一緒にいるんだし」
さらりと言って、美羽は僕を見る。
「だから、むっくんは今のままでいいんだよ」
その言葉に、思わず目を丸くした。
「……いいの?」
「いいよ」
あっさり頷いてから、美羽は少しだけ目を細める。
「でも、監禁はなし」
「分かった……我慢する」
素直に頷く。――本当は、したいけど。そこは、ちゃんと我慢しよう。だって、美羽の意思で、僕を選んでくれる……そのほうが、きっとずっと嬉しい。僕が無理やり手に入れた美羽じゃなくて。何度でも、自分の意思で僕のところに戻ってきてくれるほうがいい。
「あとさ」
僕はふと思い出して、美羽を見る。
「恋人ってことでいいの?」
小首を傾げる。すると、美羽は一瞬黙ってから、呆れたような目を向けてきた。
「……今さら?」
「だって、ちゃんと確認してないから」
「……私、浮気するかもよ?」
「いいよ。それでも」
即答すると、美羽が目を瞬かせる。
「……いいんだ」
「うん」
少し考えてから、僕は続けた。
「その浮気相手を僕が殺すから」
「……あっそ」
美羽はもう慣れたように流した。そして、何事もなかったように立ち上がる。
「それよりさ、鍵ある?」
「予備が引き出しに」
そう答えると、美羽が立ち上がった。引き出しを開ける。そして、鍵ではなく一冊のノートを取り出した。――美羽観察記録三百二冊目。美羽がぱらりとページをめくる。
「……おも」
「そう?普通じゃない?大好きな人のことを記録するの。本当ならカメラをつけて観察させてもらいたいけど」
美羽の手が止まる。そして、ゆっくりと僕を見る。
「そんなことしたら、殺すから」
氷点下のような瞳を向けられる。……たまらない。そんな目で見られるのも。僕は、嫌いじゃない。むしろ――。じゃらり。美羽が引き出しから鍵を取り出した。そして僕の腕を取る。
「わっ」
そのまま引っ張られ、二人でベッドへ傾れ込む。気づけば、美羽が僕を跨ぐような格好になっていた。見下ろされる。
「…わりとありかも」
美羽がそう言いながら、僕の上に覆いかぶさる。ふわりと甘い香りが鼻をくすぐる。そして、唇を重ねた。甘くて、痺れそうだ。狂わされる。でも、狂わされてもいい。美羽になら、何をされたっていい。これが…愛なのか依存なのか僕にはまだよくわからないけれど。そんなことより――今は、美羽を見ていたい。美羽の表情も声も体温も匂いも。この瞬間すべてを、全部覚えておきたい。それが最優先事項だ。
「わかる!前はさ。とっつきにくかったのに最近はなんかやわらかいよね」
「しかも頭も良いし、顔も良いし、運動もできるし」
女子達が何やら騒いでいる。その横では、美羽が別の女子たちに囲まれていた。
「ねぇー!美羽ってさ。神原くんの幼馴染でしょ?」
「彼女とかいるのかな?」
そう言われている美羽が、困ったように笑っている。……やっぱり可愛い。
放課後。僕の家のベッドで、美羽がごろりと転がっている。
「なーんか、面白くないなー」
「じゃあ、ゲームでもする?それとも漫画もあるよ。美羽が好きそうなゾンビのやつ」
ベッドの下に座っていた僕を見て、美羽がゆっくりと起き上がる。
「違う」
僕には何のことか分からず、首を傾げる。
「むっくんがモテてる」
そう言って、美羽は頬杖をついた。
「僕?」
「聞こえたでしょ?かっこいいって」
「あー、美羽は?」
「何が?」
「僕かっこいい?」
「そうだなぁ」
美羽が考えるように呟きながら、人差し指で僕の顎をちょんと持ち上げる。
「顔は良い」
「ふふ、嬉しい」
その言葉を聞いた途端、美羽はさらに不機嫌そうな顔をした。そして、どこからか取り出した手錠を、指でくるくると回す。
「ねぇ、むっくん。手だして」
言われた通り、手を差し出す。
「むっくんの手大きいね」
美羽が僕の手を撫でるように指を滑らせ――ガチャリ。
「え?」
思わず顔を上げる。手首には、銀色の手錠が嵌められていた。
「いいね…似合ってる」
美羽が楽しそうに笑う。……可愛い。
「ありがとう」
「なんで嬉しそうなの?」
美羽が怪訝そうな顔をする。
「だって、美羽に監禁されるのって最高じゃない?僕のことそばに置きたいってことだよね?」
そう言うと、美羽は少し考えるように首を傾げた。
「うーん、確かに。むっくんの作るクロワッサンもアップルパイも美味しいよね。無性に食べたくなることがある」
「いくらでも作るよ」
そう笑う。
「ねぇ、それって私にだけ?」
美羽は首を傾げながら、手錠の嵌められた僕の手首を指先でなぞる。じゃらり。鎖が小さく鳴った。
「当たり前でしょ。誰か他のゴミどもにつくるの?意味がわからない」
真顔で答えると、美羽は嬉しそうに笑った。
「むっくんはそれでいい。私のことずーっと見ててね?」
「当たり前、見ないでっていわれても見るけど」
そう答えると、美羽がふふっと笑った。
「それよりさ。委員長が言ってたんだ。自分のものにならないなら、せめて素敵な人と一緒になってほしいって……美羽は、どう思う?」
僕が尋ねると、美羽は足を組み替えながらこちらを見る。
「私の幸せを願うなら……私のことを愛してて、顔も良くて、頭も良くて、お金も持ってて、性格も良い男と一緒になるべき、ってこと?」
「……うん」
僕は頷く。美羽は少し考えて、首を傾げた。
「でも、それって私が決めることじゃない?私が誰を好きになるかなんて、私の自由でしょ」
あまりにもあっさりと言う。
「だから誰かに『こっちのほうが幸せだよ』って決められても、困るかな」
「……そっか」
「私だって、むっくんと一緒にいたいから一緒にいるんだし」
さらりと言って、美羽は僕を見る。
「だから、むっくんは今のままでいいんだよ」
その言葉に、思わず目を丸くした。
「……いいの?」
「いいよ」
あっさり頷いてから、美羽は少しだけ目を細める。
「でも、監禁はなし」
「分かった……我慢する」
素直に頷く。――本当は、したいけど。そこは、ちゃんと我慢しよう。だって、美羽の意思で、僕を選んでくれる……そのほうが、きっとずっと嬉しい。僕が無理やり手に入れた美羽じゃなくて。何度でも、自分の意思で僕のところに戻ってきてくれるほうがいい。
「あとさ」
僕はふと思い出して、美羽を見る。
「恋人ってことでいいの?」
小首を傾げる。すると、美羽は一瞬黙ってから、呆れたような目を向けてきた。
「……今さら?」
「だって、ちゃんと確認してないから」
「……私、浮気するかもよ?」
「いいよ。それでも」
即答すると、美羽が目を瞬かせる。
「……いいんだ」
「うん」
少し考えてから、僕は続けた。
「その浮気相手を僕が殺すから」
「……あっそ」
美羽はもう慣れたように流した。そして、何事もなかったように立ち上がる。
「それよりさ、鍵ある?」
「予備が引き出しに」
そう答えると、美羽が立ち上がった。引き出しを開ける。そして、鍵ではなく一冊のノートを取り出した。――美羽観察記録三百二冊目。美羽がぱらりとページをめくる。
「……おも」
「そう?普通じゃない?大好きな人のことを記録するの。本当ならカメラをつけて観察させてもらいたいけど」
美羽の手が止まる。そして、ゆっくりと僕を見る。
「そんなことしたら、殺すから」
氷点下のような瞳を向けられる。……たまらない。そんな目で見られるのも。僕は、嫌いじゃない。むしろ――。じゃらり。美羽が引き出しから鍵を取り出した。そして僕の腕を取る。
「わっ」
そのまま引っ張られ、二人でベッドへ傾れ込む。気づけば、美羽が僕を跨ぐような格好になっていた。見下ろされる。
「…わりとありかも」
美羽がそう言いながら、僕の上に覆いかぶさる。ふわりと甘い香りが鼻をくすぐる。そして、唇を重ねた。甘くて、痺れそうだ。狂わされる。でも、狂わされてもいい。美羽になら、何をされたっていい。これが…愛なのか依存なのか僕にはまだよくわからないけれど。そんなことより――今は、美羽を見ていたい。美羽の表情も声も体温も匂いも。この瞬間すべてを、全部覚えておきたい。それが最優先事項だ。

