巻き込まれる僕ら

ハァ~と息を吐いてみると、白い。

クスッと笑う声が聞こえた。
俺、なにを子供みたいなことしてんだ。
カッと顔が熱くなる。

「石井くん、リード持つ?」
「いいの? ありがとう」

雲は分厚く風は冷たいけど、まるで苦にならない。
弾むように歩くハントがかわいい。

「ハントの散歩は一時間くらいだから、戻る頃にはゲームに飽きてると思うよ」
「毎日そんなに散歩するんだね」
「調子上がってきたら走り出すから、無理しないでね」
「うん」

不思議……。
まさか、石井くんと並んでハントの散歩をするなんて。

足元がフワフワする感じで、夢か現実か分からなくなる。
霧がかかってて、世界が白っぽい。

「葉山くんのお母さん、優しいね」
「ただの世話焼きだよ。たまに鬱陶しい」
「お父さんも、入手困難なゲーム機を買ってきてくれたり」
「入手することをゲーム感覚で楽しんじゃう人なの」
「ふふっ。葉山くんが葉山くんに育ったのが分かる」
「……どういうこと?」
「うち、おばあちゃんと二人だから家が静かなんだ」
「石井くんみたいに、穏やかなおばあちゃんなんだろうね」

石井くんが石井くんに育ったのも分かる。

石井くんの横顔を見て、気付いた。鼻が赤い。

「これ、良かったら」

石井くんは暖かそうなコートを着ているものの、首周りは大きく開いている。

急いでマフラーを外す。
そして、背伸びして石井くんの首に巻き付ける。小さな顔がモコモコに埋もれてしまった。

石井くんのメガネが微かに曇っている。

「ごめん! 寒いのについてきてもらって」
「ううん。この子の散歩してみたかったから、うれしい」
「そっか、良かった」

ハントが珍しく立ち止まって、空を見上げた。
つられて見ると、白いものが舞った気がした。
街灯がパッと自動点灯する。

「雪?」

俺の隣で、石井くんが手のひらを上に向けて空を見る。

あの手を、あの手に、触れようと思えば、触れられる距離。

ずっと、こんな時間が続けばいい。
石井くんと二人っきりの時間が。

「石井くん」

微笑んで俺を見つめる石井くんは、まるで童話から飛び出した王子様だった。