巻き込まれる僕ら

中庭の石のベンチに座って、石井くんが買ってくれた緑茶を飲む。

「葉山くん、大丈夫?」
「だいじょ――がはっ。ぐほっ」
「ごめん、無理しないで」

優しい……。

石井くんは隣に座って、そっと俺の背中をさすってくれる。
何もしなくてもうだるように暑いのに、石井くんの手のぬくもりはじんわりと伝わってくる。

「ごめんね、葉山くん。僕のせいで……」
「全然! こっちこそごめん、俺らの悪ノリに巻き込んじゃって」

しかも、とっさにとんでもないことをしてしまった。
無意識に指先で唇を押しながら、こわごわ、そっと石井くんを盗み見る。

石井くんがニコッと笑った。

「髪、似合うね。かっこいい」
「え……え、まじで?! ありがとう! うれしい!」

かっこいい?!
石井くんにかっこいいって言われた!

胸が躍ってドキドキと高鳴る。

「葉山くんって、目黒くんたちとは違う。話しやすい」
「そ、そう?」

うわー。
一軍にいても陰キャが漏れてるだけなのに、なんでこんなにうれしいんだろ。

「コター! 珍しいね、石井くんといるのー」
「るいるいはー?」

部活でランニング中らしきジャージ姿の女子たちが手を振っている。
慌てて立ち上がり、俺も手を振り返す。

「教室! 俺ら、お茶飲みに来てて」
「ウケる! おじいちゃん?」
「ピチピチの十七歳だわ!」

キャハハ! と笑って女子たちが走り去る。
石井くんを見ると、背を丸めてうつむいている。

分かる。
ノリについていけなくて、無になるしかないの。

根っこから陰の者なんだって自覚させられて、嫌になる。

石井くんに、そんな思いをさせたくない。
俺だって、ただ紛れ込んだだけの者だ。

「あ、あの、瑠偉とは、瑠偉が俺の幼なじみに一目惚れしたのがきっかけで、仲良くなったんだけど」
「うん」
「俺、幼なじみが海外に引っ越すの、瑠偉に言えなくて」
「どうして?」
「なんか、怖くて……。俺、瑠偉のこと距離なしの怖い一軍だと思ってたから」
「僕も、ちょっと思ってる」
「だよね。いきなりゲームに参加させられたもんね。でも瑠偉、俺が言わなかったこと全然怒んなくて。幼なじみが遠くに行っちゃうなんて寂しいな、って気遣ってくれて」
「意外」
「でしょ?! 瑠偉たちってすげえんだよ」

石井くんが首を傾げた。

「俺みたいな陰キャでも、瑠偉たちといると楽しいの。人を楽しませるのがうまいんだろうな」

石井くんがクスッと笑う。

「葉山くんもすごいよ。そんな素直に人を褒める人、初めて見た」
「え、そう?」
「うん。陰キャだなんて言わなくていいのに言うし」
「あ、そっか。わざわざ言わなくていいよね」

恥ずかしくて、穴があったら入りたい。けど、ないから頭をかく。
この髪のように見た目だけは染められても、中身までは変われない……。