おれとぼくの恋愛事情

「あれ?白城?」
 背後から聞き覚えのある声に呼ばれた。
 この声は……。
 振り向くと、5メートル先に私服姿の清水琉生がいた。
 雑踏の中で清水琉生だけにスポットライトが当たったかのように、彼以外は何も見えなくなった。
 白のTシャツにジーンズ姿。黒のリュックを背負っていた。
 鍛え上げた身体のせいもあって、そんなシンプルな服装なのに輝いて見えた。
 そんな彼が僕に向かって歩いてきた。
「清水君……」
 思わず清水琉生の名前をつぶやいてしまった。
「こんな時間に何してんの?」琉生が首を傾げた。
「予備校の帰りで。まさかこんなに雨が降るとは思わなくて。」
「雨宿りか……」
 琉生は降りしきる雨に手を伸ばし「まだまだ止みそうにないな……」と、つぶやいた。
 僕は首を縦に振った。
 
 まさか清水琉生とこうして二人で会える日が来るとは……。
 心臓がドクンと強く脈打った。
 このまま二人でいられたら。
 雨がずっと降り続けてくれればいいのに。
 そんな願いを打ち消すかのように、清水君は口を開いた。
「白城は家どの辺?」
 とっさの質問に僕は道順を説明した。
「俺んちのちょっと先か……」と琉生がつぶやいた。
 しばしの沈黙が流れる。
 清水君は僕の様子を伺った。
「よし、このまま止むの待っても時間が過ぎるだけだ。ウチ来るか?」
「えっ……」
 僕は目を丸くして清水琉生を見つめた。
「今日、ウチの親は旅行だから、誰もいないし。気を使う必要ないし」
「う、うん」
「それに、白城ともっと話せたら……なんて……」
 清水君の頬が赤く染まった。
 照れている彼を見ていたら、思わずクスッと笑ってしまった。
 清水君が普段見せないような顔を自分に見せてくれている。
 それが少し嬉しかった。
「じゃ……。おじゃましようかな……」
 清水君の持っている傘は男二人が入るには少し小さかった。
 清水君は自分の傘なのに、僕が濡れないように気を遣ってくれて、右肩がびしょ濡れになっていた。
「清水君、もっと自分の方にさしなよ」
「いや、うちに帰ったら着替えるし、もうすぐだから。大丈夫、大丈夫」