大学2年目の夏。
同窓会の知らせが届いた。
母校の食堂で立食パーティーをしながら、思い出話に花を咲かせようということらしい。
琉生が「お前は行くのか?」とメッセージをよこした。
「行かない理由はない!」と即座に返信した。
不思議なもので、私と琉生は大学まで一緒だった。
進学先まで同じになるなんて、高校の頃の私は想像もしていなかった。
ちなみに、私は自分の志望校を琉生には言っていない。
ここまでくると腐れ縁としか言いようがない。琉生も同じことを考えていると思うが。
高校で一切勉強してこなかった琉生がまさか、誰もが名前を知っているような大学に受かるとは思ってもいなかった。
琉生曰く、「サッカーの集中力を勉強に生かしたまでだ」とのことだったが、それも、あながち嘘ではなさそうだ。
同窓会当日。
紺の細身のスーツを着こなした琉生は杉本たちと楽しそうに会話していた。
手にはグラスを持ち、少し落ち着いた雰囲気を醸し出していた。
見知った顔がいないか、きょろきょろしていると、後ろから肩を叩かれた。
振り向くと高円寺沙羅が立っていた。
相変わらず誇り高くて、高嶺の花のような存在だ。
白のスーツに身を包み、ローズの香りがほんのり漂っていた。
ピンク色に艶めいた口角を上げてニッコリほほ笑んでいた。
高校の時、私を目の敵にしていた人とは思えない。
「こんにちは」
「こ、こんにちは。高円寺さん、来たんだ……」
高円寺沙羅が来るとは思いもしなかったので、少し驚いた。
「ちょっと立ち寄っただけ。渡したいものがあったから」
高円寺沙羅はディオールのハンドバッグから白い封筒を差し出した。
「何?」
彼女から何かを手渡される覚えがない。
想像ができず、思わず聞き返してしまった。
「陽向の住所。今はホストファミリーと離れてマンションに住んでいるみたい」
訳がわからず、私は首をかしげた。
「どうして私に?」
「時間と共に私の中で一区切りついたの。清水琉生に渡して。まだ本気だったら」
「本気じゃなかったら?」
「あなたが好きにしていいわ。それじゃ」
高円寺沙羅はくるりと身をひるがえすと、会場を去っていった。
白い封筒を持ったまま、私はその場に立ち尽くした。
ざわめく会場の中でも、私と高円寺沙羅の様子は目立っていたのだろう。
琉生は私に近づくなり「高円寺だろ?何か言われたのか?」と気にかけてくれた。
「ううん。違う」
「じゃ、何だよ。今さら……」
「これ」
私は高円寺沙羅から渡された白い封筒を、琉生の目の前に突き出した。
「なんだ? これ?」
「白城君が今住んでる住所だって」
琉生は微動だにしない。
卒業してから、琉生が白城君と会っていないことは私も知っていた。
でも、琉生は白城君と離れてから誰とも付き合っていない。
琉生の心の中には、今でも白城君しかいない。私はそう察していた。
「ねえ、受け取ってよ」
私は琉生に封筒を押し付けた。
琉生は頑固なところがあるんだよなぁ。世話が焼ける奴なのだ。
こういう時はオブラートに包むよりも、ストレートに言うのが最も効果的だ。
「琉生さぁ、ぶっちゃけまだ白城君のこと好きだよね?」
ぶっちゃけ過ぎたかもしれない。
琉生の顔が真っ赤に染まり、耳まで真っ赤になっている。
「な、な、なんでそのこと知ってるんだよ?!お前に言ってないよな?」
「琉生見てればわかるよ。何年一緒にいたと思ってるのよ」
「そんなにわかりやすい?俺」
「わかりやすい。だから……」
全部言葉にするよりも早く、琉生は私から白い封筒をひったくり、走って会場を出ていった。
「がんばれよ」
琉生の背中に向かって、小さく声をかけた。
三日後。
琉生から『ボストンに到着した』と連絡が来た。
さすが、自分に嘘をつかない男。
行動力は、琉生の武器の一つでもあるのだ。
私は講義室の窓から空を眺めた。
太陽が沈みかけ、オレンジからブルーへ、空はきれいなグラデーションを描いている。
日本とアメリカ。
遠く離れていても、空はつながっている。
私は人差し指と中指を交差させ、空に向かって掲げた。
「グッドラック」
琉生と陽向に届きますように。
同窓会の知らせが届いた。
母校の食堂で立食パーティーをしながら、思い出話に花を咲かせようということらしい。
琉生が「お前は行くのか?」とメッセージをよこした。
「行かない理由はない!」と即座に返信した。
不思議なもので、私と琉生は大学まで一緒だった。
進学先まで同じになるなんて、高校の頃の私は想像もしていなかった。
ちなみに、私は自分の志望校を琉生には言っていない。
ここまでくると腐れ縁としか言いようがない。琉生も同じことを考えていると思うが。
高校で一切勉強してこなかった琉生がまさか、誰もが名前を知っているような大学に受かるとは思ってもいなかった。
琉生曰く、「サッカーの集中力を勉強に生かしたまでだ」とのことだったが、それも、あながち嘘ではなさそうだ。
同窓会当日。
紺の細身のスーツを着こなした琉生は杉本たちと楽しそうに会話していた。
手にはグラスを持ち、少し落ち着いた雰囲気を醸し出していた。
見知った顔がいないか、きょろきょろしていると、後ろから肩を叩かれた。
振り向くと高円寺沙羅が立っていた。
相変わらず誇り高くて、高嶺の花のような存在だ。
白のスーツに身を包み、ローズの香りがほんのり漂っていた。
ピンク色に艶めいた口角を上げてニッコリほほ笑んでいた。
高校の時、私を目の敵にしていた人とは思えない。
「こんにちは」
「こ、こんにちは。高円寺さん、来たんだ……」
高円寺沙羅が来るとは思いもしなかったので、少し驚いた。
「ちょっと立ち寄っただけ。渡したいものがあったから」
高円寺沙羅はディオールのハンドバッグから白い封筒を差し出した。
「何?」
彼女から何かを手渡される覚えがない。
想像ができず、思わず聞き返してしまった。
「陽向の住所。今はホストファミリーと離れてマンションに住んでいるみたい」
訳がわからず、私は首をかしげた。
「どうして私に?」
「時間と共に私の中で一区切りついたの。清水琉生に渡して。まだ本気だったら」
「本気じゃなかったら?」
「あなたが好きにしていいわ。それじゃ」
高円寺沙羅はくるりと身をひるがえすと、会場を去っていった。
白い封筒を持ったまま、私はその場に立ち尽くした。
ざわめく会場の中でも、私と高円寺沙羅の様子は目立っていたのだろう。
琉生は私に近づくなり「高円寺だろ?何か言われたのか?」と気にかけてくれた。
「ううん。違う」
「じゃ、何だよ。今さら……」
「これ」
私は高円寺沙羅から渡された白い封筒を、琉生の目の前に突き出した。
「なんだ? これ?」
「白城君が今住んでる住所だって」
琉生は微動だにしない。
卒業してから、琉生が白城君と会っていないことは私も知っていた。
でも、琉生は白城君と離れてから誰とも付き合っていない。
琉生の心の中には、今でも白城君しかいない。私はそう察していた。
「ねえ、受け取ってよ」
私は琉生に封筒を押し付けた。
琉生は頑固なところがあるんだよなぁ。世話が焼ける奴なのだ。
こういう時はオブラートに包むよりも、ストレートに言うのが最も効果的だ。
「琉生さぁ、ぶっちゃけまだ白城君のこと好きだよね?」
ぶっちゃけ過ぎたかもしれない。
琉生の顔が真っ赤に染まり、耳まで真っ赤になっている。
「な、な、なんでそのこと知ってるんだよ?!お前に言ってないよな?」
「琉生見てればわかるよ。何年一緒にいたと思ってるのよ」
「そんなにわかりやすい?俺」
「わかりやすい。だから……」
全部言葉にするよりも早く、琉生は私から白い封筒をひったくり、走って会場を出ていった。
「がんばれよ」
琉生の背中に向かって、小さく声をかけた。
三日後。
琉生から『ボストンに到着した』と連絡が来た。
さすが、自分に嘘をつかない男。
行動力は、琉生の武器の一つでもあるのだ。
私は講義室の窓から空を眺めた。
太陽が沈みかけ、オレンジからブルーへ、空はきれいなグラデーションを描いている。
日本とアメリカ。
遠く離れていても、空はつながっている。
私は人差し指と中指を交差させ、空に向かって掲げた。
「グッドラック」
琉生と陽向に届きますように。
