1月に入りいくつかの入試を受けた。
小林に勧められたとおり、志望校のレベルを上げて受験した。
最後の試験が終了し、外に出たら雪が降り始めた。
そっと手を空に差し出し、雪を受け取る。掌で雪がじわりと溶けた。
陽向もこの雪を見ているのだろうか。
試験が終わった安心感の中で、この冬初めての雪を陽向も見ているのか、ふと気になった。
陽向と一緒にいた日以降、俺たちは連絡を取っていない。
スマホを取り出し、メッセージアプリを開いて、陽向のアイコンを探した。
試験が終わったことを伝えたい。
何から伝えたらいいのか、言葉が出てこない。
『雪、みてるか?』
そんなことを言いたいんじゃない。
『試験、全部終わったよ。あとは結果を待つのみだ』
それだけでいいのか?
人差し指を画面に置いたまま言葉が出てくるのを待った。
『この間はごめん。会いたい』
これだ……。でも、あの気まずい雰囲気のまま別れた後で、軽すぎないか?
削除した。
「あーーー。めんどくせーーー!」
俺は雪の降る中、傘もささずに歩いた。
2月の末に合否結果が続々届き始めた。
幸いなことに、受けた大学にはすべて合格していた。
第一志望の大学に晴れて4月から通うことが決まった。
驚くべきことに、マユも同じ大学だったらしい。
さっきマユから『W大に決まった』とメッセージが入ったので、それで知った。
あいつとは小学生から大学まで一緒になるとは……。
腐れ縁ってやつなんだろう。
同じ大学に友人がいて心強い。
高校生活も残り少なくなってきた。
進学先が決まったので、学校に行く必要もないのだが、家に一人でいると陽向のことばかり考えてしまうので、登校はしていた。
登校時間なのにプロムナードは静かだ。
以前は陽向見たさにファンの子たちがプロムナードの左右に分かれていたが、今はもうその姿もない。
後ろからドタドタと後ろからドタドタと走りながら近づいてくる音がした。
と思ったら、マユだった。
相変わらず落ち着きのない女だ。息を整える間もなく、肩を上下させながらもう話し始めている。
「おはよ、琉生」
「はよー」
「ねえ、聞いた?」
「なにを?」
「白城君の絵が絵画部門賞を取ったんだって」
陽向は最後までやり切ったのだ。
去年の4月、絵画コンテストで大賞を取りたいと言っていた。
大賞ではなかったとしても、ちゃんと結果を残した。
留学の準備と一緒に展覧会の絵まで作成していたのか……。
「誰から聞いた?」
「小林先生」
「じゃあ、確かだな。その作品、見れるのか?」
「展示期間は一週間くらいらしいけど、京都の大学で見られるって」
「そうか……」
「行くんでしょ?」
「うん」
翌日、俺は京都に降り立っていた。
陽向の絵を見るために。
会場に入ると並べられた作品に圧倒された。
絵だけじゃないんだな……。
一つひとつ、丁寧に見ていこう……と思ったが、途中で体力が尽きた。
他の作品には申し訳ないが、陽向の作品を見つけよう。
絵を見るのは体力がいることを初めて知った。
白城陽向
『Dear, 僕のたいせつなひと』
その文字を見た瞬間、胸がざわついた。
陽向の絵を前にして、俺は立ち尽くした。
そこには、右腕を枕にして昼寝をしている俺がいた……。
桜の花びらがはらはらと落ちて、俺の髪に一枚、重なっていた。
思わず手で口を塞ぎ、その場にしゃがみ込む。
陽向は俺をずっと見ていた。
俺と離れている間も俺のことを想ってくれていた。
そんな陽向が信じられなくて、逃げたのは俺だ。
なんであんなことを言ってしまったんだろう。
陽向はずっとそばにいるって言ってくれたのに。
陽向……。
会場を出て、駅に向かって歩き出したが、涙が、止めようとしても止まらない。
陽向……会いたい……。
やり直せるかな、俺たち。
小林に勧められたとおり、志望校のレベルを上げて受験した。
最後の試験が終了し、外に出たら雪が降り始めた。
そっと手を空に差し出し、雪を受け取る。掌で雪がじわりと溶けた。
陽向もこの雪を見ているのだろうか。
試験が終わった安心感の中で、この冬初めての雪を陽向も見ているのか、ふと気になった。
陽向と一緒にいた日以降、俺たちは連絡を取っていない。
スマホを取り出し、メッセージアプリを開いて、陽向のアイコンを探した。
試験が終わったことを伝えたい。
何から伝えたらいいのか、言葉が出てこない。
『雪、みてるか?』
そんなことを言いたいんじゃない。
『試験、全部終わったよ。あとは結果を待つのみだ』
それだけでいいのか?
人差し指を画面に置いたまま言葉が出てくるのを待った。
『この間はごめん。会いたい』
これだ……。でも、あの気まずい雰囲気のまま別れた後で、軽すぎないか?
削除した。
「あーーー。めんどくせーーー!」
俺は雪の降る中、傘もささずに歩いた。
2月の末に合否結果が続々届き始めた。
幸いなことに、受けた大学にはすべて合格していた。
第一志望の大学に晴れて4月から通うことが決まった。
驚くべきことに、マユも同じ大学だったらしい。
さっきマユから『W大に決まった』とメッセージが入ったので、それで知った。
あいつとは小学生から大学まで一緒になるとは……。
腐れ縁ってやつなんだろう。
同じ大学に友人がいて心強い。
高校生活も残り少なくなってきた。
進学先が決まったので、学校に行く必要もないのだが、家に一人でいると陽向のことばかり考えてしまうので、登校はしていた。
登校時間なのにプロムナードは静かだ。
以前は陽向見たさにファンの子たちがプロムナードの左右に分かれていたが、今はもうその姿もない。
後ろからドタドタと後ろからドタドタと走りながら近づいてくる音がした。
と思ったら、マユだった。
相変わらず落ち着きのない女だ。息を整える間もなく、肩を上下させながらもう話し始めている。
「おはよ、琉生」
「はよー」
「ねえ、聞いた?」
「なにを?」
「白城君の絵が絵画部門賞を取ったんだって」
陽向は最後までやり切ったのだ。
去年の4月、絵画コンテストで大賞を取りたいと言っていた。
大賞ではなかったとしても、ちゃんと結果を残した。
留学の準備と一緒に展覧会の絵まで作成していたのか……。
「誰から聞いた?」
「小林先生」
「じゃあ、確かだな。その作品、見れるのか?」
「展示期間は一週間くらいらしいけど、京都の大学で見られるって」
「そうか……」
「行くんでしょ?」
「うん」
翌日、俺は京都に降り立っていた。
陽向の絵を見るために。
会場に入ると並べられた作品に圧倒された。
絵だけじゃないんだな……。
一つひとつ、丁寧に見ていこう……と思ったが、途中で体力が尽きた。
他の作品には申し訳ないが、陽向の作品を見つけよう。
絵を見るのは体力がいることを初めて知った。
白城陽向
『Dear, 僕のたいせつなひと』
その文字を見た瞬間、胸がざわついた。
陽向の絵を前にして、俺は立ち尽くした。
そこには、右腕を枕にして昼寝をしている俺がいた……。
桜の花びらがはらはらと落ちて、俺の髪に一枚、重なっていた。
思わず手で口を塞ぎ、その場にしゃがみ込む。
陽向は俺をずっと見ていた。
俺と離れている間も俺のことを想ってくれていた。
そんな陽向が信じられなくて、逃げたのは俺だ。
なんであんなことを言ってしまったんだろう。
陽向はずっとそばにいるって言ってくれたのに。
陽向……。
会場を出て、駅に向かって歩き出したが、涙が、止めようとしても止まらない。
陽向……会いたい……。
やり直せるかな、俺たち。
