受験が終わった僕は美術室にこもることが多くなった。
ポートフォリオに使った作品の一つにさらにモチーフを加え、展覧会に出す作品として仕上げたかったからだ。
担任も、受験が終わったなら好きにするといい、と言って自由にさせてくれた。
琉生にもらった筆で仕上げる。
ポートフォリオを作った時も、最後は琉生からもらった筆で仕上げた。
たとえ離れていても、琉生が見守ってくれているような気がした。
それに……どういうわけか、この筆で仕上げをすると描いた絵に命が吹き込まれたような気がする。そう、僕の表現したいものに近づく感じがする。
琉生が美術室に昼寝に訪れたのは、最後の仕上げをしている時だった。
今までで一番、自分の表現したいものに近づけた絵を前に琉生が現れた。
幸せが、こんなにも重なっていいのだろうか。
僕は合格したことを伝えた。
懐かしい琉生の部屋の空気を吸い込むと、水曜日に会っていたことを思い出した。
そう、以前はこんなふうに言いたいことをお互い話していた。
「陽向は海外に行っちゃうんだよな……」
「うん。でも日本に戻ってくるよ、琉生に会いに」
「……うん……」
「琉生もおいでよ」
「そうだな……」
ベッドに二人で並んで寝そべりながら、天井を見つめた。
「陽向の受験が落ち着いたのに、今度は俺が忙しくなってきた」
琉生が苦笑いした。
「しょうがないよ。応援してる」
「……俺たち……、これからもこうやってすれ違っていくのかな……」
琉生は両手で顔を覆った。
涙声になっている琉生に僕は気づいていた。
「……それでも……それでも、僕はずっと琉生のそばにいるよ」
僕は琉生の手を包み込み、自分の胸元へ引き寄せた。そして、頬に口づけをした。
「……うん……」
琉生の顔を見つめた。
まだ不安そうで、まだ何かを疑っているような表情だった。僕はどうしたら琉生の不安を取り除けるのだろう……。そう考えていると、「俺、自信ない……」と、琉生がつぶやいた。
こんな自信のない琉生を初めて見た。
「どうして? 日本とアメリカで距離があるだけじゃないか。終わりにする理由にはならないよ」
「ずっと不安で仕方なかった。これ以上離れるなんて……もう無理かもしれない」
琉生は僕が去年の夏にボストンにいたこと、留学を決意したこと、来年から日本にはいないことなど、心配し続けていたことをポツリポツリと語りだした。
琉生は僕が思っている以上に繊細なのだと、今さらながら気づいた。
「琉生はどうしたい? 僕たち、これで終わりじゃないよね……?」
「……わからない……」
琉生の目から涙が一筋流れるのを、僕はただ見ていることしかできなかった。
ポートフォリオに使った作品の一つにさらにモチーフを加え、展覧会に出す作品として仕上げたかったからだ。
担任も、受験が終わったなら好きにするといい、と言って自由にさせてくれた。
琉生にもらった筆で仕上げる。
ポートフォリオを作った時も、最後は琉生からもらった筆で仕上げた。
たとえ離れていても、琉生が見守ってくれているような気がした。
それに……どういうわけか、この筆で仕上げをすると描いた絵に命が吹き込まれたような気がする。そう、僕の表現したいものに近づく感じがする。
琉生が美術室に昼寝に訪れたのは、最後の仕上げをしている時だった。
今までで一番、自分の表現したいものに近づけた絵を前に琉生が現れた。
幸せが、こんなにも重なっていいのだろうか。
僕は合格したことを伝えた。
懐かしい琉生の部屋の空気を吸い込むと、水曜日に会っていたことを思い出した。
そう、以前はこんなふうに言いたいことをお互い話していた。
「陽向は海外に行っちゃうんだよな……」
「うん。でも日本に戻ってくるよ、琉生に会いに」
「……うん……」
「琉生もおいでよ」
「そうだな……」
ベッドに二人で並んで寝そべりながら、天井を見つめた。
「陽向の受験が落ち着いたのに、今度は俺が忙しくなってきた」
琉生が苦笑いした。
「しょうがないよ。応援してる」
「……俺たち……、これからもこうやってすれ違っていくのかな……」
琉生は両手で顔を覆った。
涙声になっている琉生に僕は気づいていた。
「……それでも……それでも、僕はずっと琉生のそばにいるよ」
僕は琉生の手を包み込み、自分の胸元へ引き寄せた。そして、頬に口づけをした。
「……うん……」
琉生の顔を見つめた。
まだ不安そうで、まだ何かを疑っているような表情だった。僕はどうしたら琉生の不安を取り除けるのだろう……。そう考えていると、「俺、自信ない……」と、琉生がつぶやいた。
こんな自信のない琉生を初めて見た。
「どうして? 日本とアメリカで距離があるだけじゃないか。終わりにする理由にはならないよ」
「ずっと不安で仕方なかった。これ以上離れるなんて……もう無理かもしれない」
琉生は僕が去年の夏にボストンにいたこと、留学を決意したこと、来年から日本にはいないことなど、心配し続けていたことをポツリポツリと語りだした。
琉生は僕が思っている以上に繊細なのだと、今さらながら気づいた。
「琉生はどうしたい? 僕たち、これで終わりじゃないよね……?」
「……わからない……」
琉生の目から涙が一筋流れるのを、僕はただ見ていることしかできなかった。
