琉生には連絡できないまま、時間だけが過ぎていた。
あの日から、もう一か月が経とうとしている。
それでも僕は、進路のことでまだ迷っていた。
国立の芸大かボストンへ留学するか。
そして展覧会の絵……。
決断することが多すぎて、琉生に連絡する言葉を見つけられないまま、時間だけが過ぎていった。
スケッチブックを手に取り、パラパラめくっていると昼寝をしている琉生のスケッチに目が留まった。
もう、あの水曜日から一年経つのか……。
琉生の寝顔が今にも蘇ってきそうで、目に涙があふれてきた。
あの頃みたいに、会いたい時に会って、話したいことを話せる時間が、どれほど幸せだったのか。できなくなってから、初めて気づいた。
美術室のドアが開いたので目を向けると、そこには息を切らした琉生がドアに寄りかかっていた。
「……りゅ……せい……」
僕の声に反応するかのように琉生が大股でこちらに向かい、僕の肩を両手でつかんだ。
息を切らせながら口を開いた。
「陽向……何で教えてくれなかったんだよ……」
琉生は悲しそうで、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
沙羅の病気で試合に行けなかったこと。
試合に敗れてしまったこと。
進路のことで、日常が忙しくなったこと。
それ以外にもいろいろなものが絡み合って、どこから話せばいいのかわからない。
順を追って話そうとすると言い訳がましくなってしまう。
「高円寺に聞いた」
沙羅……。彼女が何を?
「高円寺を病院に連れて行ったから決勝に来れなかったって」
琉生に言えていないことの、一つだった。
なぜ沙羅がそれを言ったのかはわからなかったが、今はそんなことはどうでもよかった。
「ごめんね」
「試合には負けるし、お前とは連絡つかないし。どれだけ心配したと思ってるんだよ」
「本当にごめん」
琉生は僕の肩に手を置いたままうなだれた。
僕は進路のことを琉生に言わなくてはならない。
「琉生……。もう一つ言わなくてはならないことがあるんだ」
琉生はゆっくりと顔を上げた。
彼の目から一筋の涙が頬を伝っていた。
「……えっ……まだあるの……?」
少し驚いた彼の顔を見たら、全部を伝えることができなくなった。
「受験勉強で忙しくなるから今までみたいに会えないかもしれない……」
琉生は、しばらく何も言わなかった。
「……そうか……別れるわけじゃ……ないよな?」
静まり返った美術室に、琉生の小さな声だけが残った。
あの日から、もう一か月が経とうとしている。
それでも僕は、進路のことでまだ迷っていた。
国立の芸大かボストンへ留学するか。
そして展覧会の絵……。
決断することが多すぎて、琉生に連絡する言葉を見つけられないまま、時間だけが過ぎていった。
スケッチブックを手に取り、パラパラめくっていると昼寝をしている琉生のスケッチに目が留まった。
もう、あの水曜日から一年経つのか……。
琉生の寝顔が今にも蘇ってきそうで、目に涙があふれてきた。
あの頃みたいに、会いたい時に会って、話したいことを話せる時間が、どれほど幸せだったのか。できなくなってから、初めて気づいた。
美術室のドアが開いたので目を向けると、そこには息を切らした琉生がドアに寄りかかっていた。
「……りゅ……せい……」
僕の声に反応するかのように琉生が大股でこちらに向かい、僕の肩を両手でつかんだ。
息を切らせながら口を開いた。
「陽向……何で教えてくれなかったんだよ……」
琉生は悲しそうで、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
沙羅の病気で試合に行けなかったこと。
試合に敗れてしまったこと。
進路のことで、日常が忙しくなったこと。
それ以外にもいろいろなものが絡み合って、どこから話せばいいのかわからない。
順を追って話そうとすると言い訳がましくなってしまう。
「高円寺に聞いた」
沙羅……。彼女が何を?
「高円寺を病院に連れて行ったから決勝に来れなかったって」
琉生に言えていないことの、一つだった。
なぜ沙羅がそれを言ったのかはわからなかったが、今はそんなことはどうでもよかった。
「ごめんね」
「試合には負けるし、お前とは連絡つかないし。どれだけ心配したと思ってるんだよ」
「本当にごめん」
琉生は僕の肩に手を置いたままうなだれた。
僕は進路のことを琉生に言わなくてはならない。
「琉生……。もう一つ言わなくてはならないことがあるんだ」
琉生はゆっくりと顔を上げた。
彼の目から一筋の涙が頬を伝っていた。
「……えっ……まだあるの……?」
少し驚いた彼の顔を見たら、全部を伝えることができなくなった。
「受験勉強で忙しくなるから今までみたいに会えないかもしれない……」
琉生は、しばらく何も言わなかった。
「……そうか……別れるわけじゃ……ないよな?」
静まり返った美術室に、琉生の小さな声だけが残った。
