おれとぼくの恋愛事情

 いつもの水曜の午後だった。
 授業が終わると自然と琉生の自宅へ向かう自分がいた。
 チャイムを鳴らすと琉生が出迎えてくれる。
 僕らが何十回と繰り返してきた、水曜の午後だった。
 
 琉生の部屋に入るなり、琉生は僕を抱きしめた。
「陽向……、こうしたかった」
 僕の耳元に琉生の吐息がかかる。
「僕もだよ」
 どちらからともなく、軽く口づけを交わす。
 何十回繰り返しても僕には新鮮だった。
 
 ベッドに二人並んで横たわっていると「あのっ」と、僕と琉生の声が重なった。
 思わず二人でおでこを寄せ合い、小さく笑った。
「琉生からどうぞ」
 琉生は僕を出迎えた時から何か言いたそうな顔をしていた。
 きっと大事なことを言おうとしている。そう感じたから琉生に順番を譲った。
「地区大会の決勝、見に来てほしい」
 いつになく真剣な顔をした琉生が目の前にいた。
 ぎこちない態度の琉生に思わず吹き出すと「必ず行くよ」と答えた。
 右手の小指を差し出すと、琉生の小指が優しく絡んだ。
「俺のサッカー人生の最後は陽向にも見てほしいって思って」
「うん」
「よかったー。陽向、土日は予備校とかで忙しいから来てくれるか心配だったんだよ」
「琉生の試合の方が大事だよ」
「俺、陽向が来るならもっと頑張れる」
 僕の表情は少し固くなったがわからないようにすぐに笑顔を作った。
 こんな言葉を聞いた後で、水曜に会える時間が減るかもしれないなんて、どうして言えるだろう。
「陽向は?何か言いかけていたよな?」
 琉生の陽気な声に我に返った。
「いや、何でもない。また後で言うよ」
「……そうか?でもありがとう。マジ嬉しい」
「そんな大げさな」
 僕は笑ってごまかした。