おれとぼくの恋愛事情

 陽向は天井を見上げたまま、ふと思い出したように声を上げた。
「あっ」
「どうした?」
「ちょっと待ってて」
 陽向はベッドを抜け出すと、バッグの中から小さなものを取り出して戻ってきた。
「琉生、左腕出して」
「こうか?」
 腕を差し出すと、陽向は細い紐のようなものを俺の手首に巻きつけた。
 青、紺、オレンジ。
 三色で編まれたミサンガだった。
 俺と一緒にいない時間にも、陽向は俺のことを考えてくれていた。
 そう思っただけで、胸がいっぱいになる。
「陽向――!」
 たまらず、隣にいる陽向に抱きついた。
「休憩の合間に作ってみたんだ。最近、ミサンガって流行ってるみたいだね」
「嬉しい」
 本当はもっと気の利いたことを言いたかった。
 でも、出てきた言葉はそれだけだった。
 小学生みたいな語彙力だと思ったけれど、陽向は少しだけ嬉しそうに笑った。
「地区大会、勝てるように。応援してる」
 陽向の優しいまなざしが、俺を包み込む。
 陽向は、子どもを寝かしつけるみたいに俺の髪を撫でた。
「今年で最後だからな……」
「うん」
「後悔しないように、全力を出し切るよ」
「うん」
 陽向は天井を見つめながらつぶやいた。
「僕も、琉生に負けないように頑張るよ」
 その横顔は、何かを強く覚悟しているように見えた。
 胸の奥が、ざわりと騒ぐ。
 こんなに近くにいるのに、陽向は何を見ているんだ。