おれとぼくの恋愛事情

 凛々しい眉に細く長いまつ毛。
 すっきりシャープな輪郭。
 程よい厚さの唇は薄いピンク色をしている。
 少しブリーチした前髪が額を覆っている。
 もっと細かく描きたいのに、時間が足りない。
 時計を見ると、描き始めて10分……いや、15分……くらい経っていた。
 完璧とまではいえないけれど、ひとまず形にはなった。
 僕は小さくため息をついた。
 いつ起きるかわからない彼を描くのは、時間との戦いだった。そのせいか、線が焦っている。
 線がうまく定まらず、目の前の彼を忠実には描けていなかった。
 予備校や家で描くときは上手くいくのに。
 意識している相手が清水君だと、手が思うように動かない。

 自分の実力にがっかりした。
 なのに、いつもより線が生きているようにも見えた。
 それが余計に、僕を落ち着かなくさせた。
 
 すると、清水君が小さく動いた。
 慌ててスケッチブックを閉じた。
「よく寝た……」
 大きなあくびをしながら両腕を上げて大きく伸びをし、首を左右に回した。
 彼は僕の存在に気づいたようだ。
「あれ、白城?」