おれとぼくの恋愛事情

 まさかこんなところにあいつがいるとは思わなかった。
 改札を出て人が混雑したコンコースを通り抜けると、あいつは雨を見上げて立っていた。
 白城陽向。
 スマホに着信があったのか、スマホの画面をじっと見つめ、タップを始めた。
 彼女だろうか……。
 高円寺沙羅の顔が浮かんだ。
 胸が少しチクリとした。
 あいつには彼女が……。
 これ以上踏み込んではいけない。
 
 思い起こせば、2か月前の取材で会話したものの、その後接触がないまま過ごしていた。
 文科系と体育会系。
 異なるジャンルの人間が交わることは滅多にない。
 どちらから意図しない限り……。
 廊下ですれ違うと横目であいつの姿を確認した。
 授業中、窓の外であいつのクラスが体育をしていると、つい目で追ってしまった。
 思いのほか運動神経がいいようで、何でもそつなくこなす。
 器用で、進学校で常に1位か2位という頭の良さ。
 絵画でも注目されているうえに、容姿端麗、180センチメートルという高身長ときた。
 完璧すぎるだろ。
 こんな人間がサッカーバカの俺に興味を持つわけがない。
 でも、あいつのことが気になって、目で追わずにはいられなかった。
 あいつを見かけると自然と取材の日のことを思い出していた。