カインドネス・リベンジ

 タクシーから降りた雅人は、勢いよく駆け出した。

 病院に入ってからも足を緩めることなく、由紀のもとへと急ぐ。
 途中、看護師が雅人を呼び止める声が聞こえたが、今の彼の耳には入っていなかった。

 息つく間もなく、由紀の病室へ辿り着く。

「由紀!」

 雅人は走ってきた勢いのまま、中へ飛び込んだ。

 そこには、由紀と……空良がいた。

 二人は突然現れた雅人を、驚いた表情で見つめている。

「どうしたの? そんなに慌てて」

 由紀が不思議そうにしている横で、空良が優しく微笑みかけてくる。
 雅人は警戒した視線を空良に送った。

 すると、その視線に気づいた空良が小さくため息をつき、微笑んだ。

「雅人、ごめん、俺邪魔だよな。出てくよ」

 空良が出て行こうとすると、由紀が残念そうな声を出す。

「空良さん、行ってしまうの? 雅人とも話せばいいのに」

 空良は由紀に軽く会釈すると、病室から出ていった。

 すぐさま雅人は由紀に問いただす。

「何話してたの? 何か言われた?」

 どこか焦った様子の雅人に、由紀は少し戸惑ったような顔をしながらも笑顔で答える。

「体調のこととか、世間話とかだよ。あと、雅人のこと」
「俺の何?」

 雅人の鬼気迫る様子に、由紀は不安そうな顔をする。

「雅人、どうしたの?」

 由紀が困っていることに気づいた雅人は、いったん気持ちを落ち着ける。
 そして、もう一度聞いた。

「ごめん、俺のことって、何話してたの?」
「別にいいじゃない、変な雅人」

 拗ねてしまったのか、由紀はそれ以上話そうとしなかった。

 これ以上詮索すると、本当に変に思われるだろう。
 この件に、彼女は絶対に巻き込みたくはない。

 話題を変え、いつも通り会話を楽しむことにした。

 楽しそうに話す由紀を見ながら、雅人はこの先のことを考えていた。

 俊介が言うように、空良を何とかしないと、大切な人を守れないのかもしれない……。