一緒に地獄に堕ちるか。

それから、体力が戻ってきた幸一君が、また学校に通えるようになって、僕は幸一君とご飯を食べるようになった。
峰君たちは、久保井君とご飯を食べてもいいかな、って聞くと、もちろん良いよ!と、思っていたよりもあっさり、送り出してくれた。
だからお昼は幸一君と一緒にご飯を食べて、授業中とか、休み時間は峰君たちと時々話す。
幸一君は幸一君で、「お前が居ない間前の席がスカスカで寂しかったぞ!!」と後ろの席の人に話しかけられていて、そこから仲良くなったみたいで、休み時間は時々その人と話していた。
だから僕は嬉しく思う反面、ソワソワもしていて。
だって、僕と仲良くなり方が一緒だったから。
僕も幸一君の後ろの席に居て、僕が話しかけるようになって、仲良くなって、好きになったのだ。
だから釘を刺しておかなくてはいけない、と、幸一君と一緒に帰りながら思う。
僕たちは最近、帰りは幸一君のお家に寄って、少しだけ一緒に過ごすことが増えていた。
「んっ」
玄関に入って早々、降ってきた幸一君の唇を受け止めながら、僕は幸一君になんて言おうか考える。
そしたら、ちょっと強めに唇を嚙まれたので驚いた。
「な、なに!」
「考え事か」
「……う」
バレたか、と幸一君と少し距離を置く。
幸一君は、言ってみろ、って目をしていて、僕は視線を彷徨わせた後、覚悟を決めて言う。
「浮気、しないでね」
「……」
黙った幸一君に、心外だ、という目をされるので、そりゃそうか、と思う。
幸一君は恋人になってから、本当に丁寧に僕と接してくれていて。
おはようとおやすみのメッセージは欠かさないし、毎晩、僕のお母さんのご飯の感想を送ってくれる。
学校ではその姿を隠しているけれど、なんというか、目が、いつも優しいなと思う。
幸一君は口より目の方が雄弁で、それは今も変わらなくて。
だから見つめられるだけで、好きって気持ちが伝わってきて、僕はいつも照れてしまう。
好きって言われるよりも恥ずかしいくらい、好きが溢れている目をしているのだ。
それは僕が幸一君を好きだから、そう見えているだけなのかもしれないけれど。
「ん」
黙っていた幸一君が、またキスをしてきて、僕の声が上がる。
流されそうになるけれど、ちゃんと返事を聞くまで今日は帰らないぞ!って思っていたら、キスは一度だけで離れていった。
「誰と」
「え?」
「浮気。誰とって思った」
「……あ」
聞こうとしてくれている、と嬉しくなって、ちょっと抱き付いて、息を吐く。
「浮気したって思った訳じゃなくて、浮気しちゃやだよって思っただけなんだけどね」
「ん」
「後ろの席の人と、最近よく話してるでしょう。それって、僕が幸一君にいっぱい話しかけて、好きになった時と同じだから、ちょっと心配になっただけ」
高い位置にある幸一君の肩に、顎を届かせながら言うと、後頭部が柔く撫でられる。
好きって、どこに転がっているか分からないから。
だめだよって、釘を刺すくらいはしておかなくちゃと思った。
それと同時に、釘を刺してもいい関係性であることを、嬉しくも思っていた。
こうした体の触れ合いも、僕が触りたい、触ってほしいと言ったからしてくれている触れ合いじゃなくて、幸一君がしたいと思ってしてくれている触れ合いだと、今の僕は知っているから。
二重で嬉しくて、幸せだった。
「俺は死にかけるくらい一途だぞ」
「ははは」
確かにそうだ、そうだった。
笑い事じゃないけれど、その言い方が面白くて笑う。
そんな僕を、幸一君は優しく抱き締めてくれた。
「でも分かった」
「うん!大好きだよ」
「ん」
「幸一君は?」
「……好き」
「好きなだけ?」
「……」
ちょっと離れた幸一君が、調子に乗るなよ、みたいな目をするから笑う。
これは照れている時の目。
照れだと分かっているから、言ってよ、って強気でおねだりする。
「んっ」
けれど幸一君は言ってくれなくて、代わりにキスをされる。
キスも嬉しいし、まあ、いいのだけれど。
いつかは大好きって言ってほしいなって思っていたら、キスを切り上げた幸一君が、僕の肩に顎を置く。
「涼太が好き」
「へへ」
照れた顔を見せないように、くっついてくるところが可愛いなと思う。
望んだ大好きではなかったけれど、名前を呼んで、僕を好きって言ってくれたから、今日のところは見逃そうと思う。
僕たちはお互い望んで触れ合って、好きを伝え合って、ちゃんと、反省を活かして行動に移していた。
それは二人のことで、一人ではできなくて。
だから、向き合ってくれる幸一君に、僕は感謝していた。
幸せになる、は、お互いが想わないと、叶わないことなのだと、僕は学んだのだ。