走馬灯が止まらない!

私、ルナ、6歳。
「あすか、ステータスオープン」と唱えても、何もでなかった。そりゃそうだよね。

この村にも同じ年代の子はいる。走馬灯状態の私からするともう、孫みたいなもんだ。とてもかわいい。

そんな6歳のおばあちゃんは、最近は筋トレ三昧だ。腕立て、腹筋、スクワット……。
でも、6歳の老人の自重如きでは、筋肉を鍛えるというより、むさ苦しいオジサマ方を喜ばせる効果が絶大だった。

近寄るな!臭い!

とは言え、ちゃんと効果はでていた。
何かの小説だったか、マンガでみた。

筋肉の半分は神経だと。
そしてそれは体感的に事実だった。

少しずつ頭の回転と身体の反応とのギャップが縮まっていく。

これなら、本気のパパと打ち合い、ギリギリで負けて、推しの顔で介抱してもらえる日も近い……

弟のルカはママにべったりだ。
そうそう、そのままその位置をキープするのだ。
とか思ってたら、たまにルカは私に甘えてくる。
どことなく、パパに似てて、推しの子どもの頃を彷彿とさせる。
あー、これ、ファンクラブ特典やわ……。

とかいって油断していると、また弟か妹が出来てしまう。

危ない危ない。

とか何とか妄想に一喜一憂していると、外から大声を上げながら、村の人が駆け込んでいた。

なんと非常識な!これから推しとの大切なスキンシップ(濡れタオルで身体を拭いて清める)儀式だというのに!!

いや、それどころじゃなかった。
盗賊の一団が襲ってきている。

パパが剣と弓矢を持ってでていってしまった。

心配そうなママとルカ。
年寄りとして、ここは私がささえなければ……

「ママ、ルカ、大丈夫よ。パパがささっとやっつけてくれるから……」

その時、ドアがドカッと大きな音がして、家の外から声が聞こえる。
「逃げろ!早く!」

パパの声。ゆっくりとした声色の中に、苦痛と焦燥が感じられる。

……推しが危ない。

私は咄嗟にルカに言う
「ルカ!ママを連れて森に逃げて!お姉ちゃんは推しと、ここで守るから!」

あ、推しって言っちゃった。

ルカにとっては早口すぎたようで、ポカンとしてたけど、ママがルカを連れて裏口からでていった。

私は壁に掛けてあった木刀を取り、扉を開ける。
そこには、浅いが切傷だらけのパパが、5人程の男たちに囲まれて、そのうちの1人に今、斧を振り下ろされそうになっていた。

……あの筋肉の張りだと、まだ間に合う!

判断するやいなや、ドアが開いたことに驚いたその斧男の喉元に木刀を投げつける。

「!!!ぉぉぉ重いけど!いけぇ!」

木刀が斧男の喉に食い込み、ゆっくりと斧が地面に突き刺さっていった。

まだ、あと4人!

パパが持っている剣
あれ、重いよねぇ。
斧はきっと、もっと重い。

迷ってはいられない。他にないのだから。

パパの剣を持ち握る。
目に映る風景がドンドン遅くなっていく。

男たちの口がゆっくり動く。
何か叫んでいるのだろう。
でも、あまりに遅すぎて意味にならない。
私にとっては。

振り上げそうな腕、切る。
踏み込んできた足、刺す
飛びかかってくる、剣を軸にして頭を蹴る
驚いている顔

「うぅぅぅぅぅるぁぁあああああ!」
あー!もうじれったい!

突きが、尻もちをついた男の股間の前、ほんの数ミリの所に突き刺さった。
その股間が湿り気を増していく。

多分、実際にはほんの数秒にも満たない時間。
でも私には長い長い瞬間。
長く、でも短時間に酷使した腕が悲鳴を上げる。
頭が痛い。マラソン大会の後よりキツイ。
目がチカチカする。

「パパ………。たすけて」

意識が途切れた。