走馬灯が止まらない!

私、ルナ、5歳。
もう、受け入れよう、チュートリアルあすかなどという別人格はいないのだ。
さよなら、御門あすか、私はルナ、もしくはルーナであることを受け入れる……。

1年ほど前に弟が産まれた。
その時に、『君も走馬灯の世界にいるの?』と恥ずかしい言葉を産まれたばかりの弟、ルカに問いかけてしまった。
日本語で。
転生者だったとしても、日本語わかんない人だったら意味ないじゃんね。
厨二病の極み……。

ルカは普通の赤ちゃんだった。

ああ、推しが結婚して子どもまで作ってしまった……。いや、私もその子どもなんだけどね。

ちょっとだけ、ほんの0.0001秒くらい、ママの事を、この泥棒猫がッ!って目で見たら、すごい悲しみと闘気がこもったような目をしてゆっくりと振り向いてきそうだったので、即ニコニコして、『弟ができてうれしい!』って言った。

危なかった……

まあ、いい。我が弟ルカよ……、ママを独り占めするのだ……我は、パパを独り占めする……。

パパにベタベタしてたら、何故か木刀を持たされた。パパ曰く、私には剣の素質があるとか。
何言ってるんだ?パパは。尊いじゃないか。

推しに言われたらしょうがない。
私は木刀を握りしめ、推しと向き合う。
ああ、真剣な表情の推しも尊い……。

ルカ、ママはそこに留めておきなさい。できれば視線も。パパは今、私のものだ。

パパは自由に打ち込んでこいと言う。
無理だよ、推しに打ち込むなんて……じゃなくて、木刀重いよ。

何かそれっぽい構え……。あ、あれにしよう。
大好きだったマンガの……

◯・即・斬。斎藤一キュンの突きのポーズ

パパの表情が変わる。
ルカはママに夢中。少なくとも履修はしてないようだ。

パパが私を見つめてる。
推しが私を……
これはもう、確定ファンサ!!

届け、私の想い!
走馬灯を全開にする。

宙を舞う葉っぱがさらにゆっくりに、止まったようにも感じられる
空気が重さが増す
心臓の鼓動の1音が長い

視線を少しだけ横に逸らす。

パパがちょっとだけ私の視線に釣られる。
視線がそれた。
意識の空白。

今!牙突!

パパの驚愕の顔!

おおおお、重いィィィ!
私の牙突(ただの突き)はパパに届くことなく、その木刀の重さで地面に倒れ込んだ。

周りで見てた観衆の笑い声。
「格好だけはよかったのに」だって。
まぁ、格好だけだしね。

やっぱり身体がついてこない。頭だけ回ってもチートなんて無理だね。
うん、普通の女子高生としていきていこう。
そんな身分があるかはわからないが。

世界はちょっぴり(ものすごく)ゆっくりだけど。
あ、もしかしたら、エルフみたいな長命種はこんな感覚?親近感わいちゃう。

そんなどうでもいいこと考えてたら、パパがとても優しい顔で微笑んで、頭をなでてくれた。

明日から筋トレだって。

え?嘘、やだ、無理。