走馬灯が止まらない!

長いようで短い、いやすんごい長かった一ヶ月が過ぎ、いよいよ明日、王都の学院に出発することになった。

書庫の本も読み尽くし、残るは数冊。

その本を手に取ろうとしたとき、領主様から呼び出しをうけた。

なんだろうなと、向かうと、そこには領主様とマクスさん、それからクラリッサ様が待っていた。

「そこに座りなさい、ルナ」

向かいの椅子に座ると、マクスさんが綺麗な所作でお茶をいれてくれた。
なんでもできるんだね!マクスさん!

「各教師とクラリッサ、マクスから報告を受けているよ、ルナ。極めて優秀だと」

いやいや、やめて?
前世知識補正を褒められても、いたたまれないよ?
転生者なら、これくらいは当たり前なのよ。

「おそれいります。教師の皆さまにとても丁寧に教えていただいたおかげです」

まあ、口ではこう言うしかないけど。

「それに、書庫の本もかなりの勢いで読んでいると聞いたよ?どれくらい読んだのだ?」

それも知ってるのか。多分マクスさん調べかな?

「残り5冊くらいでしょうか……。読んでいいものなのか分からなかったので、後回しにしてたのですが」

領主様とマクスさんが目を丸くしてる。
クラリッサ様は変わらず無表情。でも、その細かなマイクロジェスチャーは……、焦り?

「ほぅ……素晴らしい。それで?その読んでいいかわからなかった本とは?」

んー、言っていいのかなぁ……ちょっとぼかすか。
「多分、何代か前の方だと思うのですが……。C.グラナドという著者で、『詩集 愛編』、『詩集 恋編』、『詩集 憎編』、『詩集 戦編』、『詩集 失編』ってタイトルなんですけど……」

その瞬間、クラリッサ様が優雅な歩き方で凄い速さで部屋をでていった。
ちょっと経ったところで戻ってきた。

「それらの本は禁書です。読んではなりません」

やっぱり、クラリッサ様の黒歴史だったか。
みんな察した。
後で書庫に行ったら無くなってた。


出発の朝。
馬車に荷物が積まれていく。
結構な大所帯だなぁって思ってたら、なんと領主様夫婦も、この時期に社交で王都に行くんだとか。大変だね、お貴族様も。
わたしはならないぞ!なれる気もしないけど。

わたしが乗る馬車はどれかな?と思ってたら、クラリッサ様がこっちよ、と言いたげに招いてくる。
いや、やさしい方なんだけどさ……愛情が重いよ。わたし娘じゃないからね?
ほら、コルセットとドレスを使用人にヒラヒラさせないで?

クリストフ少年も手を引くでない。
君、今好感度だだ下がり中だからね?恋愛シミュレーションゲームだったら、リセットボタン押すレベルよ?

使用人がのる馬車は……
あの辺りかな。
メイド服のお姉さんたちが手招きしてる。

その馬車まで行くと、お姉さん達に肩を掴まれた。

へ?

そのまま、クラリッサ様の所に連行される……

王都までの道中はビスク・ドールになることが確定した。