走馬灯が止まらない!

私、ルナ、7歳になった。

あの『実力試し』(という名のイジメに違いない、絶対!)の大泣きのあと、領主様は私を連れて、立派な剣士に育て上げると言っていた。

正直、女だよ?って疑問だったし、本とか読める文官のほうがいいなって思ってたけど、この世界じゃ珍しくないんだとか。
まあ、お姫様とかの護衛は女性だったりするのかもね。

そんなわけで拉致される勢いで連れて行かれそうになったけど、さすがにパパがもう少しだけ……と交渉したようだ。

それで7歳。

私は荷馬車に乗せられてドナドナとなるべく、三度目の村長宅に向かう。
パパとママ、ルカも見送りについてきた。
なんだかシンミリしちゃう。
家をでてほんの少しの間だけ。

走馬灯回ってるからね!
もう何時間もシンミリし続けてる気分だよ。

実際には家をでてちょっと経ったら、ケロッとし始めた私をみて、パパとママがやるせない顔になってる。
まあ、いつものことだからね。

村長宅につくと、そこには領主様の護衛についていた剣士の人が2人来ていた。
グラッドさんはいない。
よかった、ほんとに、もうあの人怖い。

剣士の一人が手を挙げて笑いかけてきた。
「お嬢ちゃん、久しぶり。あの凶暴なゴリラはいないから安心していいよ」

「道中は、俺達が護衛するから、美少女らしく馬車で寛いでると、良き……グフぅ」

ん?大丈夫かな?
もう一人はなんか変なもん食べた?

ていうか、あのゴリラ、あなた達の隊長でしょうに、その言い分!

まともな方の剣士がパパに向かって言った。
「エルクライン、では御息女はお預かりする。手紙等は自由に届けることはできるが、しばらくは学院に籠ることになるので、ここへは帰ってこれない。今のうちに別れをすませておけ」

え?学院?
また学校に通うの?
てかそんなのあるの?

頭がはてなマークでいっぱいの私にパパとママとルカが名残り惜しそうに抱きしめてくる。

パパ、大好きだよ……。この世界でも推しの姿が見れて嬉しかった。

ママ……。クッ!パパと仲良くしやがるといいさ!元気な赤ちゃん産んでね!健康に気をつけやがれ!!

ルカ、大きくなって推しの姿になって、私のこと大好きとか、愛してるとか、結婚しよう、とか言ってね。パパとママをよろしくね。

短い、でも長い別離の瞬間。

そして私は荷馬車に、もとい、立派な馬車に乗る。
いや!ほんと!お貴族様仕様!!

ゴリラに襲われたお詫びなのかな?
泣かされた甲斐があるというものだ。

窓を開け、家族に手を振る。
「じゃあ、行ってきまぁす!」

こっちの世界で7年も一緒にいたのだ。元の御門あすかとしての意識は持っていても、本当の家族になっているのだ。
寂しさが込み上げてくる。

ルカは2歳、次に会えるのは何歳になってるかな……。

ん………?
やばい。

子供って3歳よりも前のこと憶えてないことのほうが多いよね……。

私、ルカに忘れられる……?

馬車の中で激しく泣いた。


外の2人の剣士はそれぞれ感慨深そうに、ご褒美を与えられたかのように、それぞれ微笑んでいた。