授業が終わって、机の上の物を片付けていると、話したことのない男子が近づいて来た。
「藤代さん、この後って予定ある? あいつらとご飯でも食べに行こうかって話してたんだけど……」
少し離れたところにいる、数人を指差された。
「残念でしたーっ! 藤代さんはこれからデートですーっ!」
わたしの代わりに返事をしたのは、大学に入ってから仲良くなった友達だった。
「……彼氏……いるんだ……」
「藤代さんの彼氏、超かっこいいんだから。あんたなんか相手にされませーん」
「何その言い方。ひでぇ」
「まぁ、代わりにご飯は私たちが付き合ってあげるから」
「藤代さん、こいつはわたしたちの方で面倒見るから行っちゃっていいよ」
「じゃあ、わたしは先に帰るね。誘ってくれてありがとう」
「また明日ね!」
手を振って教室を出た。
一翔くんとの待ち合わせの場所に行くと、女の子が2人、一翔くんと話をしている。
昨日も違う子達に囲まれていた。
相変わらずだなぁ、って思いながら近づいていくと、一翔くんがわたしに気が付いたので声をかけた。
「待たせてごめんね」
「待ってないよ。行こう」
歩き始めたところで、さっきまで一翔くんと話してた女の子が「お似合い」言うのが聞こえた。
聞き間違い……じゃない……よね?
一翔くんの方を見ると、「何?」って顔をされて、「何でもないっ」と返した。
「堀北も彼氏連れてくるんだっけ?」
「見たら驚くよ! 芸能人みたいな人だから」
「知ってる」
「どうして?」
「いろいろ」
「いろいろ?」
高校の頃は、一翔くんが女の子に囲まれてたら、話が終わるまでちょっと離れたところで待っていた。
「気づいてくれないかなぁ」って心の中で思っているだけだった。
でも、今は自分から声をかけることができる。
日本に帰って来て、一翔くんの顔を見て、ずっと聞きたかったことを聞いた。
「どうしてわたしを好きでいてくれたの?」
こんなこと、ずっと日本にいたままだったら聞く勇気なんてなかった。
一翔くんは、普通に、なんでもないことのように答えてくれた。
「一緒にいるといつだって優しい気持ちになれるから。それに、真優の前だとかっこつけないで自分のままでいられる」
そして少し間を置いて、一翔くんは付け加えた。
「真優は特別なんだ」
わたしはもう、「じゃない方」なんかじゃない。


