「この半分の消しゴム……消えないやつだ。この箱の中って――」
今度は段ボールごと、抱きかかえた。
「見たらだめ!」
「それ、ずっととっておくの?」
「家宝だから」
「いいけど」
笑われた。
「笑わないでっ」
「ごめん」
この春から、一翔くんと同じ大学に行くために、ひとりだけ日本へ帰って来た。
その引越しの手伝いに一翔くんが来てくれた。
「寂しくない?」
「向こうでも、学校がある時は親と離れてたし同じ……同じじゃない。ここには一翔くんがいる」
イギリスで、日本の高校卒業資格を得られる唯一の学校は全寮制だった。
そこで初めて親と離れて暮らすわたしが寂しくなかったのは、一翔くんのお陰だった。
「これからもいっぱい思い出が増えていくのに、全部とっておくの? すぐにこんな小さい箱になんて入らなくなると思うけど?」
「だったら大きな箱を買わないといけない……」
「本気で言ってる?」
「さすがに冗談です」


