25日は、10時に中学校の前で待ち合わせだった。
集まったのは12人で、吉崎さんはまだ来ていない。
「真優だ! 日和も!」
「涼香も久しぶり!」
「学校どう?」
「楽しいよー」
「真優はねー」
日和が意味深な言い方をする。
「え? どう言うこと? 真優、なんかあるの?」
「それ、今、いいからぁ。き、今日って不思議な集まりだよね」
慌てて話を変える。
「どうして?」
「中2と中3、どっちかで同じクラスだった人を誘い合うって不思議じゃない?」
「そう言われたら、私はあそこのグループの子達、話したことない」
涼香の視線の先にいる女の子達を見る。
涼香は3年で同じクラスになったので、2年の時同じクラスだったそのグループの子達とは交流がないようだった。
「あれは、山岸くんのフアンだよ。今日のこと聞いて『行きたい』って連絡してきた」
「なんで日和はそんなこと知ってるの?」
「だってひっそりと幹事なんだもん」
「初めて聞いたよ?」
「女子の連絡係だけ、って約束で引き受けただけだから」
やがて山岸くんと担任の先生が来て、使っていた教室に入らせてもらった。
「教室に入らせてもらえるなんて思わなかったね」
卒業する前と変わらない教室を見ながら言うと、隣にいた日和がそれに答えた。
「担任が野球部の顧問だったでしょ? それで今でも交流がある山岸くんが頼んでくれたんだって」
「そうなんだー」
「うちの中学から英育高校行くのってすごいらしいよ。そんなに野球上手だったなんて、真優知ってた?」
「ううん。知らなかった」
もしかして、一翔くんは山岸くんのこと知ってたりするのかな……そんなことをちょっとだけ考えた。
学校を出る時、野球部の子が山岸くんを見つけて、かしこまった挨拶をしているのを見て、日和が「ほらっ、有名人」と言って、わたしを軽く小突いた。
中学を出た後は焼肉バイキングへ行った。
お店の入口で席に案内されるのを待っていると、吉崎さんがやってきた。
あ! と思ったけれど、吉崎さんは、真っ直ぐに山岸くんの方へ行ってしまった。
2人が話し始めたところで、他の子たちが気づいて「久しぶり!」と言いながら吉崎さんを囲んでいく。
すぐにそこへ入っていくことができなくて、その輪の中心にいる吉崎さんを見つめることしかできなかった。
「真優、立ってないでそこに座って」
日和に言われて座ると、山岸くんが「吉崎、そこ座れよ」と、わたしの隣を吉崎さんにした。
山岸くんは知らないんだ……わたしが吉崎さんともめたこと……
吉崎さんは黙ってわたしの隣に座った。
「それでは、再会を祝ってカンパーイ!」
幹事の山岸くんが、大人みたいに乾杯の音頭をとって、みんながジュースやウーロン茶のグラスを合わせた。
途端に、「お腹すいた」「肉早く焼こうよ」「こっちお皿足らない」なんて、テーブルごとにわいわいし始めた。
わたしと吉崎さんは端っこの席に座っていたから、盛り上がってるみんなからは少し距離がある。
「お肉、焼くね」
話さないと、と思いながらも、どうきり出したらいいのかわからなくて、お肉を焼いていると、日和がみんなの前でわたしの名前を出した。
「あのねー、真優ってば、彼氏できたんだよー。それも学校でもかっこいいって言われてる人!」
日和ってば、なんてことを……
みんなが一斉にこっちを向いたので、下を向いてしまう。
「写真ないのー?」
誰かがそう言うと、「あるよー」と日和がそれに答える。
なんで日和が一翔くんの写真を持ってるの?
「えーっ! かっこいい!」
女の子たちが盛り上がってる中心はなぜか日和で、みんなでわたしを放っておいて、わたしの話題で盛り上がっている。
「お、お肉焼けたみたい」
吉崎さんに話しかけると、お皿を出されたので、焼けたお肉を入れた。
「タレはどれにする?」
「そっちので」
「これね」
タレを渡すと、吉崎さんがくすっと笑った。
「彼氏できたんだ」
「……うん」
「かっこいいんだ」
「……うん」
「それ、自分で言う?」
「あ、そうだよね……」
吉崎さんがタレをわたしのお皿にも入れてくれた。
「わたし……気づけないこと多くて、あの時はごめんなさい」
「もういいよ。そんな昔のこと」
「でも、わたしのせいで、みんなとお別れもできずに、連絡先も言いたくない気持ちにさせてしまったから」
「そんなこと、まだ気にしてたの?」
「そうじゃない。何もなかったかのように、ふたをして……逃げてた」
「それ、正直に言うんだ」
吉崎さんは小さく笑った。
「うちの親ね、ずっと別居してたんだ。それが中2の冬に離婚が決まって、わたしはお母さんに、お兄ちゃんはお父さんについて行くことになったの。あの時、藤代さんが見たのはお兄ちゃんで、あの日が最後に会える日だった」
「だったらお兄ちゃんだって言えば――」
「あの頃は、親が離婚するとか言いたくなかったから。『お兄ちゃんなら家で会えるでしょ?』とか言われるのが嫌だった」
「あ……」
「今はもうそんなこと全然気にしてないけどね。中学の頃のことなんてもう気にしないで」
「……わたしがここで謝ってそんなふうに言ってもらえても、わたしだけがすっきりするだけで、吉崎さんはちっとも誤解が解けないから、あの時の人はお兄ちゃんだったってことだけは、みんなに説明させて。他のことは言わない」
「もう、いいよ」
「よくないよ! みんなが誤解したままなんて良くない!」
「他の子たちとはもう忘れちゃってるよ? さっきも普通に話したし。気にしてたのは藤代さんと、山岸だけだよ」
「山岸くん?」
……わたしの隣の席を吉崎さんにしたのは偶然じゃなかったの?
「女子がもめてたの知ってたみたい。わたしにも事情を聞いてきた」
「あいつ、甲子園の常勝高に行ってるでしょ? 先輩に頼んで横につながりのある高校に片っ端から連絡とってもらって、わたしを見つけ出したのよ。 それで、クラス会やるから、藤代さんと話せって言ってきた」
「それでわざわざ帰って来たの?」
「そんなわけないじゃん。たまたま今日、お母さんがこっちに来る用があったから、一緒について来たの。お肉焦げてるけど?」
「あっ」
網の上にあったお肉は見事に焦げていた。
「しようがないねー」
そう言って、吉崎さんは自分のお皿のお肉をわたしに半分くれた。
「食べようよ?」
「うん……」
「みんなに誤解されたのは、親の離婚のこと言いたくなかった自分のせいでもあるのに、藤代さんに腹を立てて……誰にも何も言わずに転校してごめんね」
「謝るのはわたしの方だから。本当にごめんなさい」
「ID交換する?」
「いいの?」
「その代わり彼氏の写真見せて。さっき、わたしだけ見れなかったからくやしい」
「えっ……」
「お肉も焼いて」
「焼きます。いっぱい焼きます」
お肉を網に乗せていると、吉崎さんはお肉を食べる手を止めて言った。
「さっき、自分のこと『気づけないこと多い』って言ってたけど、そうでもないと思うよ? ここ入ってすぐに、小さい子がうろうろしてるの見てすぐに親とはぐれたんじゃないかって気づいたじゃん」
「あれは、あの子が不安そうにしてたから」
「藤代さんって、変な人だねー」
「変……?」
「冗談だって。真剣に受け取らないでよ」
「ごめん」
「ちょっとだけ、視点を変えるだけだと思うよ」
「それ、どういう意味?」
「野菜も焼いて」
「はい、焼きますっ」
吉崎さんが笑いながらお肉を食べたので、わたしもさっきもらったお肉を食べた。
野菜を網にのせている間、遠くで盛り上がっている山岸くんの声がずっと聞こえていた。
焼肉屋さんを出て、2次会のカラオケに行く時、日和がわたしのそばに寄って来た。
「吉崎さんと話せた?」
「話せた。連絡先も交換した」
「良かったね」
「山岸くんにお礼言わないといけない」
「そうだねー」
「日和は知ってたの?」
「『女子は何かあった?』って聞かれて教えたんだけど、それをまだ覚えてるとは思ってなかった」
「それっていつのこと?」
「吉崎さんともめたすぐ後だったと思うよ。中2の冬休み入る直前」
そんな昔……
話しながらカラオケまで行った。
「さっき聞いたんだけど、黒田さんも彼氏ができたんだって」
「そうなんだぁ」
「写真見せてもらったけど、葉月くんの方がかっこよかったよ」
なぜだか、バシンと背中を叩かれた。
「日和、どうして葉月くんの写真持ってるの?」
「真優は持ってないの?」
「みんなで撮ったのならいっぱいあるよ」
「2人で撮らないの?」
「2人で……」
夏祭りの時、1枚だけ一緒に撮ったけど……
「今度見せてね!」
日和はわたしの腕に自分の腕を絡ませると、「急ごう。みんなにおいてかれてる」と言って笑った。
予約されていたのは、1番大きなパーティールームで、L字型のソファの他に、テーブルと椅子がいくつかわかれている席もあった。
小さな個室しか入ったことがなかったからキョロキョロしながら、L字型のソファに日和と座った。
「詰めてよ」
と言われ、見ると声の主は山岸くんだった。
日和に言うと、一人分ずれてくれたので、わたしもその分横へずれた。
それで、山岸くんはさっきまでわたしが座っていたところへ、どすんと座った。
「真ん中じゃなくていいの?」
「なんで? オレ幹事だから1番端っこがいいんだけど?」
「そっか。今日、ありがとう。お店の手配とか大変だったでしょ?」
「よくやらされてるから慣れてる。歌決めないの? 1人1曲はノルマだから」
「歌は、いつも歌うの決めてるから」
「ふうん」
山岸くんが急にわたしの方を向いた。
「学校楽しい?」
「楽しいよ。山岸くんは? 野球の名門校行ってるんだよね? すごいね」
「まだ補欠にもなれてないけど」
「でも、甲子園にいっぱい行ってるような学校なんでしょ?」
「藤代、野球詳しかった?」
「ううん……ちょっと聞いただけ。知ってる風に話してごめんなさい」
「べつに……」
山岸くんって、こんな人だったっけ?
もっと人なつっこい感じだったような気がしたんだけど。
でも、すごく気をつけて見てると、口調とは裏腹にその表情は怒ってるわけでも機嫌が悪いわけでもなさそうだった。
「山岸くん、みんなに囲まれてたね」
「男ばっかじゃん」
「女の子にも囲まれてた時もあったよ」
「それ、ドリンク注文する時だけじゃん」
違うよ。
クラスに山岸くんのフアンがいたの知らないんだ。
それに中学の時、女の子の間で「誰がかっこいいか」って話になった時、必ず名前があがってたよ。
今日だって、山岸くんが呼びかけたから来たって子いるのに。
睦美おばさんは「真優ちゃんはちゃんと気づけると思うよ」って言ってくれたけど、人の気持ちを推しはかるところまでは、まだまだ難しい。
5時までのはずだったけれど、みんな別れるのが名残惜しくて、お店の前で少し話したりしてた。
15分くらいしてから、ようやくバラバラと散っていった。
みんなと別れた後も、そのままそこに立っていたら、山岸くんも残っていて話しかけられた。
「藤代は帰らないの?」
「ちょっと」
「誰かと待ち合わせ?」
「うん」
一翔くんと待ち合わせをしていることは、わざわざ言わなくていいよね?
「あのね、山岸くん……」
「あっ!」
そう言った山岸くんの視線はわたしの後ろに注がれていたので、振り向くと、一翔くんが立っていた。
「葉月……元気そうじゃん」
「そっちも」
2人が挨拶をかわすのを見て驚いた。
「2人知り合いなの?」
「塾が一緒だった」
答えたのは一翔くんだった。
「そうなんだ! すごい偶然だね! 山岸くんとは中2と中3の時、同じクラスだったんだよ」
「中2も……?」
一翔くんが呟くように言った。
「そーだよ、葉月。だから2年間」
「そうだね、2年間同じクラスだったね」
一翔くんは黙って山岸くんを見ていた。
「迎えに来たんだ」
「まぁ」
「今日、品川が……品川日和って青葉なんだけど、藤代と葉月の話をみんなに言いふらしてたの聞いた……悪かったよ。いろいろ」
「それはきっと、山岸のお陰」
「ふうん。オレいいやつじゃん」
「いいやつだよ、山岸は」
「オレ……帰るわ」
「山岸くん、待って! ありがとう。まだお礼、言えてなかったから」
「何が?」
「吉崎さんが教えてくれた。山岸くんの部活の関係で今日になったことになってるけど、本当は吉崎さんがこっちに帰って来れる日に合わせてクラス会の日決めたんでしょ?」
「吉崎のやつ……言うなって言ったのに」
「それに、吉崎さんの連絡先、いろんな人に聞いて探してくれたって。本当はわたしがしなくちゃいけないことだったのに、簡単にあきらめちゃったから……」
「藤代には無理だったよ。吉崎、中学のやつには誰にも連絡先教えてなくて、野球部づてに探したんだから」
「山岸くんって優しいよね。中学の時もずっと優しかった」
「……誰にでも、ってわけじゃないんだけど……まぁ、仕方ないよなぁ」
山岸くんはわたしと話してるはずなのに、ずっと一翔くんのことを見ていた。
「ごめんね、わたし邪魔だった? 久しぶりに会ったから、2人で話したいんだよね?」
「……2人で……か……」
「そうだよね。久しぶりに会ったんだったら――」
「……そうじゃないよ。あーあっ! 葉月、こーゆー藤代のこと好きなの?」
「好きだよ」
思わず一翔くんの顔を見たら真面目な顔をしていた。
「っんだよ……じゃあな!」
「山岸!」
「葉月とはもう会いたくないっ」
山岸くんは何も言わずに手だけ振って行ってしまった。
それで一翔くんと2人だけが残された。
「今の……いいの?」
「うん。いい」
それっきり一翔くんは何も言わなかった。
しばらくしてようやく一翔くんは口を開いた。
「……山岸と仲良かったんだ」
「クラスで男女があまり話さない中で、山岸くんは誰とでも話す人だったから」
「ふうん」
なんとなく……話しづらい?
肩がふれそうなほど近くにいることに気がついて、ちょっと離れた。
それを黙ってじっと見られた。
いつもと違う?
「あ、あんまり近づくと、今日のわたしは焼肉の匂いだから。髪の毛とか煙がついてて。そういうの、嫌かなって……」
一翔くんが小さく息を吐いた。
「……ごめん。俺サイテー」
「えっ? どうして?」
「山岸と2人で話してるの見て、イラついてた。イラつく相手は真優じゃないのに。ごめん……今日、いつもと雰囲気違う感じなのも……他のやつに会うためなのかな……とか……ヤキモチ」
「そそそそんな……」
「『そ』が多いよ?」
「多かった?」
「多かった」
少し笑ってくれた。
「今日、吉崎さんと話せて謝ることができたよ。仲直りできて、連絡先も交換した。わたしのわがまま聞いてくれてありがとう」
「そういうのは、わがままって言わないって」
「あのね……それと今日、山岸くんに言われたことがあって。わたし全然気づいてなかった」
「……うん」
一翔くんは、わたしに合わせていつもゆっくり歩いてくれるけれど、今日はもっとゆっくりだった。
「何となくそうかも、って思うことはあったんだけど……わたしのこと……」
「……うん」
「音痴って」
「え? おん――」
「カラオケで歌わない方がいいって。ずっと、ちょっと歌は残念な方だとは思ってたんだけど……誰かにはっきり言われたのは初めて。だから、一翔くんとはカラオケ行かない」
わたしがそう言うと、一翔くんは最初ちょっとぼーっとしてる感じだったけれど、やがて、笑った。
「それ、山岸が教えてくれたんだ。あいつの話って、それだけ?」
「後は……」
「言ってよ」
「……甲子園に必ず行くって」
「そっか」
野球の話をする時、ちょっと躊躇してしまったけれど、一翔くんは普通だったから、ほっとした。
公園の横を歩いていたところで、一翔くんは立ち止まると、わたしの方を向いて言った。
「遅くなったけど、誕生日おめでとう」
「ありがとう」
そして、カバンの中から小さな紙の手提げ袋を出して渡してくれた。
「プレゼント」
「えっ? いいの? わたしに?」
「他に誰がいるの」
「そうだよね。嬉しい。見てもいい?」
「じゃあ、あそこ、行こう?」
すぐそばの公園に行って、ベンチに座った。
膝の上で手提げ袋の中に入っていたグレーの箱を開けた。
箱の中の薄い紙に包まれていたのは、クローバーの形をしたペンダントトップのネックレスだった。
「とってもきれい」
「つける? 俺がつけていい?」
頷くと、一翔くんは箱の中からネックレスをとってつけてくれた。
ネックレスをつけてもらう時、一翔くんの顔がすぐ目の前にあって、「へへへ」って、変なふうに笑いながらも、泣いてしまった。
「なんで泣くの?」
一翔くんが慌てる横で涙をふきながら、もう一回お礼を言った。
「嬉しくて。ありがとう。とっても嬉しい。今日のこと絶対忘れない」
ハンカチを持っていない方の手は膝の上においていたのだけれど、その手を上から一翔くんの手がぎゅっとした。
「さっき、いつもと違うって言ってたけど、一翔くんに会うと思って服選んで……だから……クラス会のためじゃない」
涙で、一翔くんの顔は見えていなかったけれど、きっと笑ってたはず。
「似合ってるし、かわいい」
優しい声だった。
一翔くんは、電車のホームまで一緒に来てくれて、わたしが乗る電車が来るまでずっと待っててくれた。
電車が来て、ばいばいを言った後も、見えなくなるまでホームに立っていた。
言えなかったことがある。
憶測でしかないから言っていいことなのかわからなかった。
もし、一翔くんが山岸くんと知り合いじゃなかったら言ってたかもしれない。
カラオケで隣同士に座った時、山岸くんが「友達の話」と言って話したこと……
『オレの……友達の話……なんだけどさ』
山岸くんはそう言うと、一呼吸おいた。
『仲良いと思ってたやつと好きな子が被ってるのがわかって、しかもその仲良いと思ってたやつとその好きな子が付き合ってるの知ったらしいんだ』
『ややこしいね』
『男2人の好きな子が一緒だったってことだよ』
『ああ、そっかぁ』
『その場合さ、付き合ってない方の男が、その女の子に告ったら、どう思うと思う?』
『それ、相談する相手間違ってるよ? アドバイスなんて難易度高すぎる』
『頼むから、藤代だったら、って思って答えてよ』
わたしだったら? わたしだったら……
『わたしだったら言わない。好きな2人が幸せな方がいいから、気を使わせたくない』
『おい、今、どっち目線で答えた?』
『え? 友達の彼女に告白するかでしょ? 間違ってた? あれ? さっきのもう一回言って!』
『もういいよ。あのさ、今日って藤代の――』
山岸くんが何か言いかけた時、誰かが「みんなで写真撮るから、こっち集まって!」と呼んだ。
それで、山岸くんは話すのをやめてしまって、その後はもう話そうとはしなかった。
その時は、上手いアドバイスが出来なかったみたいで、申し訳なかったなぁ、って思っただけだった。
でも……一翔くんと山岸くんが知り合いだと知って、2人が話してるのを見ていて……最後の最後に……何か……引っかかった。
睦美おばさんが見た「中学の時2人でいた男の子」は、山岸くんだった。
どこかの帰りに偶然会って、「妹に頼まれたもの買うの付き合って」と言われて、一緒に本屋へ行った。
買ったのは女の子が読むマンガで、わたしが呼ばれたのは「レジに行くのが恥ずい」という理由だった。
男の子と2人でいたのはその時しかない。
山岸くんは吉崎さんのことをずっと気にしていてくれた。
そして、わざわざ探してくれて……
だから……山岸くんの言ってた「友達の話」は……きっと……嘘……
でも、山岸くんがはっきりとは言わなかったから、わたしは気づいてないふりをしなくちゃいけない。
鈍感すぎる自分を変えたいと思ってた。
でも、気付いてしまうのは、いいことばかりじゃない……それを知ってしまった。
少し考えればわかることなのに、たくさん考えないとわからなかった。
そんな……どうしようもないわたしに……一翔くんは優しくて……宝物をくれた。
16歳の誕生日を、わたしは一生忘れない。


