「ニチカといっぱい遊んでくれてありがとう。あいつめちゃくちゃ楽しそうだった」
「わたしも楽しかったよ! ババぬき負けてばっかりだったのがくやしかったけど」
「藤代、ババが自分のとこに来ると顔に出るから」
「えっ!」
「気づいてなかった? それでババ取ってもらえそうになると嬉しそうな顔になるから、さすがにニチカも気づくよ」
「知らなかった……ババぬき弱いって昔からよく言われてたけど、そんなの誰も教えてくれなかった」
「俺が取る方だったら取ってあげれたのに」
「そんなずるしちゃだめだよ」
「ニチカと真剣に遊ぶとこもかわいかった」
さ、さらりとまたそーゆーことを言う……
「そろそろ行かないと電車来るね」
「葉月くん、今日はありがとう」
「名前、もう呼んでくれないんだ」
「な、名前っ? あ……名前っ……ばいばい、一翔……くん」
「真優、またいつでも遊びに来て」
「じゃあね」
改札の前まで行って、もう一度、葉月くんのところへ戻った。
「あのね、面白いこといっぱい見つけて、それで、か、一翔くんがたくさん楽しくなるようにがんばるね!」
つい口走ってしまったわたしの決意は、なぜか笑われた。
きっと日本語がおかしくなっちゃったから。
でも笑ってもらえたなら、取り合えず成功。
ホームに着くと電車はもう来ていたので慌てて乗った。
席がいっぱい空いていたので、端っこに座って、今日のことを思い出して、顔が笑ってしまうのを我慢した。
ババぬきをしていて、ニチカくんがわたしのトランプを取る時、いつも葉月くんが笑いをこらえていた意味がわかった。
ニチカくんは仮面ライダーカードのお披露目をしている時、何度もわたしを見て笑いかけてくれた。
葉月くんのことを……一翔くんと呼ぶことになった。
全然慣れなくて、改札のところで「葉月くん」と呼んでしまい、訂正されてしまっ――
今頃になって気が付いた。
葉月くん、じゃなくて一翔くんは、別れ際、わたしを「真優」って呼んだ!
まだまだ夏休みは始まったばかり。


