strawberry * strawberry



「それ……それのせいでケンカしたの?」
「……だって真優とお揃いの……大切だったから……」
「そんなの……いくらでもまた取るのに……」

ふるふると瑛里華は頭を振る。

「あの時、真優がくれたのはこれだから」

思わず瑛里華をぎゅっと抱きしめた。
瑛里華はわたしの制服の上着を掴んで言った。

「わたしね……ずっと……女子に嫌われてて……知らない子ばっかりの高校に来たら……友達できるかもって……真優は初めてできた友達で……初めてお揃いができて……」
「瑛里華、何も気が付かなくてごめんね」
「どうして真優があやまるの?」


瑛里華がどれだけつらい思いをしてきたのか、全然気が付かないでいたなんて、友達失格……

2人で花壇の縁に座って、いっぱい話をした。
中学までのことを聞いた。
高校に入ってからのことも聞いた。


「真優がいてくれるから学校が楽しい」
「それはわたしも同じだよ」
「同じじゃないよ。全然違う」
「瑛里華?」
「聞いてた……よね?」
「……うん」
「中学の頃もいつもあんなふうだった。勝手に好きになられて、好きって言われて……そんなの頼んでないのに! ……こーゆーこと言うのが嫌われちゃう原因なのかな……」

瑛里華が笑顔を見せる。

「そんなとこで、笑わなくていい! さっきから……笑うとこじゃないよ! 怒んなよ!」
「……そんなこと言ってくれたのは真優が初めて」

瑛里華の瞳にまた涙がにじんだ。

「男子に冷たくしたら『いい気になってる』って言われて、優しくしたら今度は『こびうってる』って言われて。好きな人をとったとか言われても、わたしは何もしてないのに」

瑛里華に何を言った良いのかわからなくて、手をぎゅっとにぎった。

「持ってるものよく隠されるから、シャーペンや消しゴムはいっぱい予備を持っとくようにした。だって女子は誰も貸してくれないし、男子に借りたらまた何か言われるし」


消しゴム……

あの時、瑛里華に聞けば良かった……

瑛里華がわたしと葉月くんに消しゴムをくれた時……

『どうしてそんなに予備を持ってるの?』って、聞けばよかった……

ロッカーの中に新品のノートしか入ってなかったのは、入れてたら隠されるからなんだ……

自分のことばかりで、瑛里華のことに気づけなかった。


「ごめんね、わたし気が付かなくて。いろんなことわかってなくて」
「……真優と一緒にいると楽しいよ」
「わたしね、葉月くんが瑛里華のこと好きでも、瑛里華が葉月くんのこと好きでも友達やめないよ!」
「葉月くん?」

きょとんとした顔で瑛里華がわたしを見た。

「わたし、葉月くんのこと好きじゃないよ?」
「え? でも、他の男子と違って葉月くんとはよく話してるよね?」
「それは理由があって、葉月くんは――」
「で、でも瑛里華は葉月くんと……付き合ってる……んでしょ?」
「本気で言ってる?」
「うん」

そこで瑛里華は急に笑い出した。
泣きながら笑った。

「何で笑うの? 泣かれてるよりはいいけど」
「葉月くんに聞いてみたらいいよ」
「聞くって?」
「葉月くんがどうしてわたしとよく話してるのか。わたしからは言えないから」
「そんなこと聞けるわけないじゃん!」
「聞いた方がいいよ。真優ってば、真優だね」
「確かに、わたしは『真優』だけど、意味わかんないよ?」
「ありがとう。真優と友達になれて良かった」
「それはわたしも同じ! 瑛里華と友達になれて良かったって思ってる。だから、今度からもっといろんなこと話して。力になれないこともあるかもしれないけど、話を聞くことはできるから」
「もう隠す必要もなくなったから、そうする」
「帰りにアイス食べに行かない?」
「うん! 食べたい! 行きたい!」