朝から「?」がつくようなことばかりで、ホームルームも聞いてるんだか聞いてないんだかわからないでいたら、中間考査の試験範囲が書かれている紙が配られた。
今回は高校に入ったばかりだから範囲は狭いと言われたけど、中学の時と比べたら全然違う。
習った時からずっと思ってたけど、ルートっていつ使うんだろう?
3乗とか日常で見たことないけど?
それが展開できたからって、どうするの?
時差の計算もできなくていいよ。
海外行かないから。
そんなことを考えながら、1限目に必要な教科書をロッカーへ取りに行った。
教科書はほとんどロッカーへ置きっぱなしにしてるから、試験勉強のために少しづつ持って帰らないといけない。
「真優、ぼんやりしてる?」
その声で、瑛里華が隣に立っていることに初めて気が付いた。
「いたの全然気が付かなかった」
「ぼーっとロッカーの中見てたね」
「これ全部持って帰らないといけないかと思ったら憂鬱になってた」
そう言って、何気に瑛里華のロッカーの中を覗いて驚いた。
中には未使用っぽいノート以外何も入っていない。
瑛里華はそのノートを1冊取り出して席に戻って行った。
試験に備えてもう持って帰っちゃったの?
「おいっ、堀北じゃない方!」
振り向くと、コイツは確か……名前は絶対呼ばないけど。
それでも、一応返事をしようとしたら、
「名前、藤代だよ。お前、まだ名前覚えてないの? ダっさ。で、何の用?」
新庄くんがわたしの代わりに返事をした。
「えっ……あっ……ノート……さっき返却されたやつ、おれの机に置いてあったから……」
「それって、名前わかってるってことじゃん。だったらちゃんと名前呼べよ」
なぜか新庄くんがノートを受け取って、わたしに渡してくれた。
新庄くん、なんだか得意げになってるけど、ついこの前まで自分もわたしのこと「じゃない方」って呼んでたの覚えてますか? と、心の中で言ってみた。
「ありがとう」
ノートを受け取って席に戻ろうとしたら、今度は同じクラスの仁木さんと谷さんが「ちょっとーっ」と言って、廊下へわたしを引っ張って行く。
「新庄くんといい感じ?」
「いい感じって?」
「だって、ねぇ」
仁木さんと谷さんが顔を見合わせる。
「藤代さんって、池田くんと仲いいと思ってたんだけど、実は新庄くんなの?」
そこに葉月くんは入ってないんだ。
池田くんと同じくらい葉月くんとも話してると思うんだけど……
「そういうんじゃないよ」
「でもでも、オリエンテーションからだよね? 急接近」
「何かあったの?」
「何か……何か?」
オリエンテーションで新庄くんと関わったのって……
「わたしのパーカーにバッタがくっついてるのをとってもらったくらいしか記憶にないけど?」
「それだけ?」
「それだけ」
「なぁ-んだ」
「つまんなーい」
あ、なんかごめんね、って謝ってしまいそうになる。
「ごめんね、廊下まで連れ出しちゃって」
「ううん、全然」
愛想笑いをしながら教室に戻った。


