4人でお昼を食べるのは久しぶり。
食べ終わると、葉月くんはお土産だと言ってお菓子を配ってくれた。
「ありきたりだけど、テーマパークのクッキー」
あれ?
「ありがとー」
瑛里華がお菓子をもらった後、葉月くんがわたしにもお菓子をくれた。
「はい、藤代も」
「わたしも?」
あれ?
「葉月くん、ありがとう」
思わず瑛里華と池田くんの顔を見て、今貰ったお菓子を見た。
「真優、どうしたの?」
「何でもない」
本当はちっとも何でもなくなんかない。
朝、教室で、葉月くんからテーマパークのお土産をもらった。
授業が始まるちょっと前に、葉月くんは「これ旅行のお土産」と言って、小さな袋をくれた。
その場で開けて見ようとしたら、「家に帰ってから見て」って言われたから、リュックの内ポケットに入ってる。
葉月くんを見ると、池田くんとテーマパークで乗ったアトラクションの話をしていた。
何で別にお土産をくれたんだろう?
これは……まさか……思わせぶりな態度ってやつ?
勝手に葉月くんのこといい人だと思い込んでたけど、実は女心を手玉に取るよーな、すっごいワルだった……とか?
なんてね。
お土産くれた時、わたしが熱出して寝込んでる時に遊んでてごめん、みたいなことを言ってた。
熱出して学校休んでたから「お見舞い」なんだろーな。
でも……そうじゃなかったら?
大丈夫。そんなの想像するほど身の程知らずじゃない。
葉月くんには瑛里華がいるんだから。
それでも、いろんなことが気になって、午後の授業中、ちらちら葉月くんを見ていたら、目が合った。
「何?」
と、小さな声で聞かれて、ぶんぶん頭を振ってしまった。
それからはもう、真っすぐ前だけ見て授業を受けたけど、授業が頭に入るわけがない。
学校が終わると、とにかく急いで家に帰った。
途中、電車の中で見てしまおうかと何度も思ったけれど、「家に帰ってから見て」って言われたから、我慢。
急いだから、ばんっ、と大きな音をさせてしまったけど、自分の部屋のドアを閉めて、リュックの中から小さな袋を出した。
袋は普通にテーマパークの袋で、中を開けると、キーチェーンが入っていた。
鍵のモチーフにテーマパークのキャラの猫とブルーの花がちりばめられていて、先端に「M」の文字が装飾されている。
かわいいっっ!!!
この「M」って「真優」のイニシャルだよね?
テーマパークにはいくつかキャラがいるけれど、その中でも猫が一番好きだった。
葉月くんがわざわざこれを選んでくれたんだと思ったら、ずっと大切にしまっておきたい。
でも、つけていかなかったら、「気にいらなかったんだ」って思ってしまうかもしれない。
それは嫌。
リュックのファスナーには瑛里華とお揃いの猫のキーホルダーが付いている。
だから、リュックのサイドポケットのファスナーにつけて、落とさないようにポケットの中に収めた。
朝学校に行ったら、同じものを瑛里華もつけていて、「お揃い~」とか言うかもしれないと思ったりもしていた。
でも、教室に入ったわたしを見て、瑛里華は普通に「おはよー」と言っただけだった。
リュックのサイドポケットに入れてたから見えなかっただけかもしれないけど……
席に着くと、葉月くんがこっちを見たので、サイドポケットに入っているのを出して見せた。
「ありがとう。かわいいからつけたんだけど、落としたら嫌だから内側に入れてる」
「気に入ってもらえて良かった」
葉月くんが笑ってくれたので、やっぱりつけてきたのは正解だった。
リュックを机の横にかけようとした時だった。
「えーーーーっ! 藤代さん、テーマパーク行ったの?」
叫び声を響かせながら末田さんがやってきた。
「行ってないよ?」
「でもそれ、そのキーチェーン!」
「これは、お土産でもらったから」
「彼氏?」
「ち、違うっ」
くれた人はすぐ隣の席の人です。
「でも、これ、限定のやつだよ? 普通に売ってないんだけど?」
「そうなの?」
「GWに数量限定で販売したやつで、すっごい並ばないと手に入らないから、欲しかったけどわたしは挫折したもん。そんなの『お土産』って簡単にくれる人って、どういう関係?」
そこで、ガタンと音がした。
見ると、葉月くんのイスがひっくり返ってる。
「ごめん」
葉月くんはイスを直すと急ぐように教室を出て行ってしまった。
葉月くんがいなくなると、末田さんはまた話を続けた。
「これ買うのに何時間も並ぶのと、アトラクションに乗るのと悩んで、わたしはアトラクションをとっちゃったけどね。おひとり様1個限りの檄レア品だよ」
「末田さん、詳しいね」
当たり障りない相槌を打ちながらも、頭の中では別のことがぐるぐる回っていた。
「うちはお母さんが好きで、GWは毎年家族で行ってるんだー」
そこからテーマパークの話が始まって、どこで見るパレードが一番いいかとか、撮影スポットの話とか、ホームルームが始まるまで、末田さんがずっとひとりで話していた。
葉月くんは末田さんが話してる間、どこに行ったのか帰って来なかった。
でも末田さんの話で、昨日に続き今日も授業は頭に入りそうにない。
葉月くん、どうしてわたしにくれたの?
……なんてもちろん聞く勇気はない。


