体が重いなぁーって思いながら、朝起きて、学校に向かった。
教室に入ったら、すぐドアの近くに新庄くんがいて、話しかけられた。
「おい、じゃない方っ」
「ねぇ、わたしの名前知ってる?」
新庄くんの顔をじっと見ながら聞いてみた。
「は?」
「知ってる?」
「……ふっ、藤代」
「話しかける時はちゃんと名前呼んでよ。そしたらちゃんと答えるから」
「ふ、藤代、オレがやったうまい棒食った?」
「食べたよ。ありがとう」
「今度、納豆味も食べてみろよ」
「うん。そうしてみる」
リュックの中から1限目に必要なものを机の中に入れてから、リュックを机の横にかけたところで、葉月くんがこっちを見ているのに気がついた。
「おはよう」
「おはよ」
「藤代、俺があげたうまい棒食べた?」
「あ、ううん、まだ」
言えない。
絶対に言えないっ。
葉月くんからもらったのは、ジップロックに入れて大切に机の引き出しの中にしまってるなんて、絶対に言えないっ。
「ふうん。そっか」
葉月くんはそれだけ言って、席を立ってしまった。
そして、ホームルームが始まるまで戻って来なかった。
「真優ーっ、なんかぼんやりしてるけど、お弁当食べないの?」
「ああ、うん……なんか食欲がない」
「大丈夫?」
「寝不足……かな?」
「オリエンテーションで疲れた?」
「かもしれない……」
いつものように、瑛里華と葉月くんと池田くんと4人でお昼を食べてても、なんとなくだけど、葉月くんがよそよそしい?
結局、食欲がなくて、お弁当は食べずにまたバックに戻した。
それで、3人が話してるのをぼんやりと聞いていた。
「ニチカももうすぐ誕生日かぁ。オメデト言っといて」
「言っとく」
ニチカって誰だろ……
「誕生日に家族でテーマパークに行くんだ」
「いいなぁ! でもGW人多そうだね」
「そうなんだよ。ニチカのやつアトラクションいっぱい乗るつもりでいる気なんだけど、きっと人が多くて乗れないから機嫌悪くしないか心配してる」
葉月くん、GWは家族旅行なんだ……
その時クラスの誰かが葉月くんに声をかけた。
「葉月、今日日直だろ? 化学のセンセーが教材運んで欲しいから職員室来てくれってさ。結構あるみたいだから誰か連れてった方がいいかも」
「わかった!」
葉月くんは返事をしたあと池田くんを見た。
「勇は今から部活のマネんとこに行くんだっけ?」
「悪い。むすび最後の一個食べたら行く」
「堀北、もう食べたんなら手伝ってよ」
「いいよー」
瑛里華がわたしを見て「ちょっと行ってくるね」と言って、先を行く葉月くんを追いかけるようについて行った。
葉月くんが歩調を緩めて瑛里華を待つ。
追いついた瑛里華は葉月くんの腕をポンっと叩いた。
ああそうか。
2人は……
「なぁ、オレが藤代からもらったチーズ味のうまい棒さぁ、一翔が――」
なんで朝からみんなうまい棒の話ばかりするの……
そんなことを思ってたら、ふわっとして、ちょっと、座ってられなくなって……
池田くんが「おいっ!」と言ってるのが最後に聞こえた。
目を覚ますと保健室にいた。
ぼーっとしながら起き上がり、カーテンを開けると、その音に保健室の先生気がついた。
「もう少ししたら保護者の方が来られるから、それまで横になっておきなさい」
「……どうしてわたしはここにいるんでしょうか?」
「中庭で倒れたって、男の子が担いで来てくれたのよ。名前は……」
「担ぐ」というワードで誰だかわかってしまった。
お姫様抱っこじゃないところがきっと池田くんだ。
「大丈夫です。誰だかわかります」
起き上がったものの、もう一度ベッドに横たわった。


