未来へのバトン

さらに、健一の心を蝕んでいたのは、自分自身の「肉体的な衰え」への不安だった。

28歳の麻衣。その若さと眩しさに比べ、自分はどうだ。

体力の低下。仕事のストレスによる疲労。そして何より、「子作りというミッション」に追われるプレッシャーから、以前、最後まで至れなかった苦い記憶が、冷たい汗となって背中を伝った。

(もし、今夜もダメだったら……。僕は男として、夫として、彼女に何を提供できるというんだ)

論理的な思考は、時に人を絶望させる。「54歳 妊娠率」「54歳 男性機能」。検索窓に並ぶ数字はどれも残酷だった。

健一は、資料の中にあった一節を思い出した。

「人は正論(ロジック)だけでは動かない。感情や映像に訴える『イメージ』が不可欠である」

(イメージ……。そうだ、僕はまだ、麻衣に何も見せていなかった)